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家賃は上げられる。でも利益が増えるとは限らない——賃料上昇時代に考えたいこと

先日、健美家に掲載されていた、一都三県の一棟賃貸オーナー1,000人を対象とした調査記事を読みました。

調査結果によると、過去2年間で賃料を引き上げたオーナーは全体の56.7%。

半数を超えるオーナーが、実際に家賃を上げていたことになります。

この数字だけを見ると、

「これからは家賃を上げやすい時代になった」

と感じるかもしれません。

ただ、私がこの記事を読んで感じたのは、単純に「家賃を上げればよい」という話ではありません。

むしろ、どのエリアに、どのような物件を持っているのか。

そして、周辺の賃貸需要をどこまで正確に把握できているのか。

今後は、そうしたオーナー側の判断力が、これまで以上に収益の差として表れるのではないかと思いました。

※本記事は、健美家に掲載された賃貸経営の実態調査の記事を参考に、公開された調査結果を私なりの視点で再構成したものです。


家賃を上げたオーナーは全体の56.7%

今回の調査は、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県で一棟アパート、または一棟マンションを所有するオーナー1,000人を対象に行われたものです。

調査期間は2026年7月4日から5日。

その中で、過去2年間に賃料を引き上げたと回答したオーナーは56.7%でした。

エリア別に見ると、かなり差があります。

過去2年間に賃料を引き上げたオーナーの割合

エリア 賃料を引き上げた割合 全体平均との差
東京都心5区 73.2% +16.5ポイント
東京・市町村部/多摩エリア 62.2% +5.5ポイント
調査全体 56.7%
千葉県 54.7% -2.0ポイント
東京23区・都心5区を除く 54.5% -2.2ポイント

※健美家掲載記事の数値をもとに、当ブログで比較しやすい形式へ独自に再構成。東京都心5区は千代田区・中央区・港区・渋谷区・新宿区。

最も高かったのは、東京都心5区の73.2%です。

さらに都心5区では、10%を超える賃料の引き上げを行ったオーナーも23.2%いました。

この結果を見ると、やはり都心部の賃料上昇力は強いと感じます。

しかし、僕が注目したのは、都心5区だけではありません。

東京の市町村部・多摩エリアでも、62.2%のオーナーが賃料を引き上げています。

賃料上昇の動きが、一部の超都心物件だけではなく、周辺エリアにも広がっていることが分かります。


「家賃を上げた」と「利益が増えた」は同じではない

ただし、賃料を上げられたからといって、必ずしも賃貸経営が改善したとは限りません。

例えば、家賃を5,000円上げても、それが原因で退去につながり、次の入居が決まるまでに数カ月かかれば、年間の収入は下がる可能性があります。

入居者募集の広告費や原状回復費、仲介会社に支払う費用まで考えれば、家賃の引き上げだけで判断することはできません。

大切なのは、

「いくら上げられるか」

ではなく、

「稼働率を維持しながら、どこまで適正賃料に近づけられるか」

だと思います。

入居者に選ばれる理由がない物件で、数字だけを見て家賃を上げるのは危険です。

一方で、周辺相場が上昇しているにもかかわらず、昔の家賃をそのまま続けることも、長期的には経営上の機会損失になります。

だからこそ、感覚ではなく、周辺の成約事例や募集状況、競合物件の設備などを確認したうえで判断する必要があります。


64.6%のオーナーが「賃貸需要は安定している」と回答

今回の調査では、所有物件のエリアについて、賃貸需要が安定していると感じているオーナーが64.6%いました。

およそ3人に2人が、現在の賃貸需要に手応えを感じていることになります。

これは、賃貸経営をしている側にとって明るい数字です。

ただし、これは一都三県の市場全体が、どこでも同じように安定しているという意味ではありません。

駅からの距離。

築年数。

間取り。

設備。

周辺の供給戸数。

同じ市区町村の中でも、条件によって入居の決まり方は変わります。

僕なりに考えると、賃貸需要が比較的安定している今だからこそ、物件ごとの差が見えやすくなるのだと思います。

需要のあるエリアに物件があっても、選ばれるための手入れをしていなければ、その需要を取り込むことはできません


オーナーの約4割が、物件の維持・改善や規模拡大に前向き

今後3年間の運営方針についても、興味深い結果が出ています。

今後3年間の主な物件運営方針

運営方針 回答割合 僕なりの見方
修繕・リフォームを継続する 26.1% 現在の物件価値を維持・改善する
建て替えを検討する 8.9% 築年数や収益性を根本から見直す
新たな物件の取得・買い増しを検討する 4.6% 賃貸経営の規模を拡大する

※健美家掲載記事の数値をもとに、当ブログで独自に整理。

この3項目を合わせると39.6%です。

約4割のオーナーが、現状維持ではなく、物件の改善や建て替え、買い増しを考えていることになります。

特に僕が注目したのは、「修繕・リフォームを継続する」という回答です。

賃料を上げるためには、オーナー側も物件に手を入れる必要があります。

設備を更新する。

共用部分をきれいにする。

募集写真を見直す。

入居者が不便に感じている部分を改善する。

単に「相場が上がったから家賃も上げる」のではなく、入居者にとって納得できる価値をつくることが重要です。

家賃は、オーナーが一方的に決める数字ではありますが、その家賃で入居するかどうかを決めるのは入居者です。

この当たり前の関係を忘れてはいけないと思います。


定期借家契約を「知っている」オーナーは76.4%

今回の記事では、定期借家契約についての調査結果も紹介されていました。

「よく知っている」と回答したオーナーは35.5%。

「概要は知っている」が40.9%。

合計すると、76.4%のオーナーが定期借家契約について一定の知識を持っていることになります。

導入意向については、

  • 積極的に導入したい:19.9%
  • 条件次第で導入したい:38.8%
  • 合計:58.7%

という結果でした。

もちろん、すべての物件を定期借家契約にすればよい、ということではありません。

物件の立地や入居者層、契約条件によって向き不向きがあります。

ただ、知識がなければ、その契約方法を選択肢として比較することもできません。

普通借家契約しか知らない状態と、定期借家契約の特徴も理解したうえで普通借家契約を選ぶのでは、同じ契約でも意味が違います。

僕は、今回の記事で本当に重要なのは、家賃を上げたオーナーの割合だけではないと感じました。

賃貸経営の選択肢をどれだけ知っているか。

そして、その選択肢の中から自分の物件に合う方法を選べるか。

これからは、こうした知識の差も収益に表れてくるのだと思います。


現時点の結論

今回の調査では、過去2年間に賃料を引き上げたオーナーが56.7%いました。

確かに、家賃を上げやすい市場になっている部分はあると思います。

しかし、重要なのは56.7%という数字だけではありません。

東京都心5区では73.2%まで上がっている一方で、エリアによって結果には差があります。

つまり、賃料を上げられるかどうかは、市場全体の雰囲気ではなく、所有している物件の立地と競争力によって決まるということです。

僕なりの現時点の結論は、

「賃料の引き上げは戦略ではなく、物件の価値と市場を正しく見た結果」

だということです。

修繕やリフォームを続け、入居者から選ばれる状態をつくる。

周辺相場を定期的に確認する。

契約方法を含めて、賃貸経営の選択肢を増やす。

その積み重ねがあって、初めて家賃の引き上げが長期的な収益改善につながります。

相場が上がっているから上げるのではなく、上げても選ばれる物件をつくる。

これからの賃貸経営では、この順番がますます重要になるのではないかと思います。


参考記事:健美家
賃料を引き上げたオーナーは56.7%、都心5区では7割超

調査主体:帝国不動産株式会社
調査対象:一都三県で一棟アパートまたは一棟マンションを所有する賃貸オーナー1,000人
調査期間:2026年7月4日~5日

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。

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