毎月、決まった日に家賃が入ってくる。
滞納もなく、特に苦情も届いていない。
不動産オーナーにとって、ありがたい状態です。
ただ、それだけで「物件に問題はない」と判断してよいのか。私自身も不動産オーナーであるため、考えさせられる事例がありました。
住居として貸していた部屋が、所有者の知らないところで、マンスリーマンションとして第三者に貸し出されていたというものです。
気になるのは、勝手に転貸されていたこと。そして、家賃が問題なく入っていたために、その実態に気づきにくかったことです。
社宅だと思っていた部屋が、予約サイトに載っていた
楽待新聞が2026年10月23日に報じた事例では、あるオーナーが、入居中の区分マンションを購入しました。
借主は不動産会社で、購入時には社員が住んでいると説明されていたそうです。契約上の用途は居住用。管理規約でも転貸を認めていなかったと報じられています。
家賃は毎月入金され、管理会社からトラブルの報告もありませんでした。
ところが、賃料の増額交渉をきっかけに借主の事業を調べると、自分の部屋がマンスリーマンションの予約サイトに掲載されていたのです。
所有者が受け取る家賃は月5万4500円。一方、サイト上の募集料金は月額約18万円で、家具・家電や光熱費を含む内容でした。さらに、1カ月未満の短期利用プランもあったとされています。
借主からは、契約当初からマンスリー運営をしていたという回答があった一方、売主と仲介会社は実態を把握していなかったと回答したそうです。
オーナーは契約解除や損害賠償を求めて提訴し、旅館業法違反の疑いについても警察に告発したと報じられています。ただし、記事の時点で違法性や賠償責任についての司法判断が示されたわけではありません。
気になるのは、料金の差だけではない
この事例では、家賃と募集料金の差に驚く方も多いと思います。
ただ、家具・家電の用意や光熱費、清掃、募集などには費用がかかります。また、募集料金どおりに常時稼働していたかも別の話です。差額がそのまま利益になるとは限りません。
私がオーナーとして強く引っかかるのは、自分が承諾していない使い方を、知らないところでされていたという点です。
社員の住居として貸すことと、短期利用者を募集して繰り返し貸し出すことでは、所有者が確認すべき条件も変わります。
どのような人が利用するのか。
出入りはどの程度あるのか。
建物のルールに合っているのか。
営業に必要な手続きは済んでいるのか。
事前に説明があれば、確認し、条件を協議し、場合によっては断ることもできます。
無断で進められると、その判断の機会自体がなくなってしまいます。
自分の資産に関わることを、自分が知らないまま決められている。ここに大きな問題があると感じます。
家賃が入っているからこそ、気づけない
もう一つ、他人事ではないと思うのが、実態の見えにくさです。
滞納があれば、すぐに確認するでしょう。苦情があれば、管理会社から報告を受けて対応するはずです。
しかし、入金もあり、苦情もなければ、詳しく調べるきっかけがありません。
今回の事例も、発覚のきっかけは滞納や近隣トラブルではなく、賃料交渉に伴う調査でした。
所有者が受け取る毎月の数字に変化がなくても、現場での使われ方は、認識しているものと違うかもしれない。
これは不動産オーナーとして、気に留めておく必要があると思います。
もちろん、契約を守る責任は借主にあります。確認が難しいからといって、無断で転貸する行為が正当化されることはありません。
そのうえで、所有者にも実態を確認する機会が必要なのだと思います。

「法人契約だから安心」で止まらない
法人契約と聞くと、個人契約より安心だと感じる場面もあるでしょう。
ただ、契約相手が法人であることだけでは、実際の使用目的までは分かりません。
社員の住居なのか。
研修などに使うのか。
第三者への転貸を予定しているのか。
契約の際には、そこまで具体的に確認しておきたいところです。
国土交通省が公表する賃貸住宅の標準契約書でも、居住を使用目的とし、貸主の書面による承諾を得ない転貸を禁止する条項が設けられています。これは契約書のひな形であり、実際には個々の契約内容を確認する必要があります。
入居中の物件を購入する場合も、家賃や滞納履歴に加え、使用目的や転貸の承諾に関する書類まで確認することが大切だと感じます。
説明だけで終わらせず、何を根拠に確認できたのかまで整理しておく。その意味は小さくありません。
マンスリーという名前だけでは判断できない
契約に反する転貸の問題と、営業に必要な許可などの問題は、分けて考える必要があります。
厚生労働省の通知では、ウィークリーマンションなどが旅館業に該当するかは、営業の実態などを踏まえて総合的に判断する考え方が示されています。
「賃貸借契約だから」「マンスリーという名称だから」という理由だけで、問題がないとは判断できません。
一方で、短期利用という情報だけで、個別の営業を違法と決めつけることも避けるべきです。
実際の利用方法や管理の状況を整理し、必要に応じて行政窓口や専門家に確認することが大切です。
任せることと、把握しておくこと
管理会社に日々の業務を任せることは、物件を運営するうえで必要です。
ただ、家賃の管理や修繕対応に加え、使用目的と異なる利用が疑われる場合に、誰が何を確認するのか。そこまで共有できているかは、一度確認してもよいと思います。
法人契約で利用者が変わる際の連絡方法や、現場で気になる情報があった場合の報告先を決めておくことも、その一つです。
また、物件名や住所で公開されている募集情報を調べることも、確認のきっかけになります。ただし、古い掲載や別の部屋の可能性もあるため、見つけた情報は事実確認につなげる必要があります。
入居者の生活やプライバシーを尊重しながら、適切な手順で利用状況を把握する。
管理を任せていても、所有者として持っておきたい視点です。

家賃の入金だけでは、見えないことがある
今回の事例で私が気になったのは、無断で転貸されることと、その状態に所有者が気づきにくいことの両方です。
家賃を払っているからといって、合意した使い方を勝手に変えてよいわけではありません。
そして、家賃が入っているからといって、所有者の認識どおりに物件が使われているとも限りません。
私自身も不動産オーナーだからこそ、この問題には怖さを感じます。
毎月の収入を確認することに加えて、自分の物件がどのように使われているかにも目を向ける。
長く資産を守っていくために、改めて意識しておきたいことだと思います。





