日本の人口が減っている。
この事実だけを見ると、
「これから賃貸需要は減っていくのではないか」
「人口減少時代にアパートを建てても大丈夫なのか」
と不安になる方もいると思います。

しかし、今回公表された2025年国勢調査と、現在の東京の家賃動向を合わせて見ると、少し違った景色が見えてきます。
僕が注目しているのは、単なる人口の増減ではありません。
人がどこに集まり、その人たちが実際にいくらまで家賃を払えるのか。
これからの不動産投資では、この2つをセットで考える必要があります。
日本の人口は5年間で約310万人減少した
2025年10月1日時点の日本の人口は、速報値で約1億2,305万人でした。
2020年と比較すると約309万7,000人、率にして2.5%減少しています。
単純平均すれば、5年間で毎年約62万人ずつ人口が減った計算です。
人口が増加したのは東京都と沖縄県の2都県だけで、残る45道府県では人口が減少しました。
東京都は2020年から1.4%増加しています。
さらに東京23区の人口は約995万3,000人となり、2020年から約22万人、2.3%増加しました。
日本全体の人口は減っている。
しかし、その中でも東京23区には、今も人が集まり続けています。
これが現在起きている大きな流れです。
人口は減っても、世帯数は増えている
不動産投資家が人口と同じくらい確認しなければならないのが、世帯数です。
2025年の日本の世帯数は約5,712万5,000世帯。
2020年から約129万4,000世帯、2.3%増加しました。
人口は約310万人減少している一方で、世帯数は約129万世帯増えているのです。
東京都の世帯数も、この5年間で4.7%増加しました。
東京都の1世帯当たりの人数は、全国で最も少ない1.88人です。
つまり、人口は減っていても、一人暮らしや二人暮らしなどの小さな世帯は増えているということです。
賃貸住宅の需要は、人口の数だけで決まるわけではありません。
住戸を必要とする単位は、基本的には「人」ではなく「世帯」です。
人口が多少減っていても、世帯が細分化されていけば、必要とされる住戸数は増える可能性があります。
特に東京では、単身者や二人世帯に合ったコンパクトな賃貸住宅の需要は、今後も一定程度維持されると考えています。
東京の家賃は物価以上のスピードで上がっている
現在の東京では、家賃の上昇がかなり鮮明になっています。
2026年6月の東京都区部の消費者物価指数は、前年同月比で1.7%上昇しました。
生鮮食品を除く総合指数は1.6%、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は1.9%上昇しています。
一方、2026年5月の東京23区における平均募集家賃は、次のようになっています。
賃貸マンション
| 面積帯 | 平均募集家賃 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 30㎡以下 | 11万3,180円 | +12.5% |
| 30~50㎡ | 18万1,237円 | +10.0% |
| 50~70㎡ | 25万7,105円 | +6.8% |
| 70㎡超 | 41万2,618円 | +10.1% |
賃貸アパート
| 面積帯 | 平均募集家賃 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 30㎡以下 | 7万5,611円 | +11.5% |
| 30~50㎡ | 12万7,392円 | +10.1% |
| 50~70㎡ | 17万6,803円 | +9.4% |
マンションのシングル向き家賃は24カ月連続、アパートのシングル向き家賃は13カ月連続で、2015年1月以降の最高値を更新しました。
なお、この調査の「家賃」は、賃料だけでなく、管理費や共益費などを含む入居者の月額負担額です。
一般的な物価上昇率が1%台であるのに対して、東京23区の募集家賃は面積帯によって前年より6%から12%程度上昇しています。
現在の東京の家賃上昇は、物価上昇だけでは説明できません。
東京への人口集中に加え、土地価格、建築費、人件費など、複数の要因が重なっていると考えられます。
家賃はどこまでも上げられるわけではない
ここからが、僕が今後の東京の賃貸市場を考えるうえで最も重要だと思っている部分です。
東京の家賃には、今後も一定の上昇圧力がかかると考えています。
土地価格や建築費が高い状態が続けば、新築物件の事業費はなかなか下がりません。
新築物件の所有者は、収支を成立させるために、ある程度高い家賃を設定せざるを得なくなります。
そして、新築物件の家賃が上がれば、周辺の中古物件の家賃にも上昇圧力がかかります。
ただし、家賃は建築費や物件価格だけで決まるわけではありません。
最終的に家賃を支払うのは、そこで暮らす入居者です。
土地価格や建築費が2割上がったからといって、入居者の給料がすぐに2割上がるわけではありません。
食料品、光熱費、保険料なども上昇する中で、入居者が家賃に使える金額には限界があります。
そのため今後は、
都心の家賃は上がるものの、入居者がその上昇についていけなくなる
という局面が、少しずつ増えてくると考えています。
都心の家賃上昇が、周辺区のチャンスになる
家賃が上がりすぎたからといって、東京で働く人が全員地方へ移住するわけではありません。
多くの人は、通勤や生活の利便性を大きく落とさずに、もう少し家賃の安い場所を探します。
都心5区から、その周辺区へ。
山手線の内側から、山手線の外側へ。
さらに家賃が上がれば、23区の外側や、埼玉、千葉、神奈川の都心直通駅へ。
このように、都心の家賃上昇によって、賃貸需要が少しずつ外側へ押し出されていく可能性があります。
僕はここに、都心から少し離れた区のチャンスがあると考えています。
ただし、都心より家賃が安ければ、どこでも入居者が集まるという話ではありません。
重要なのは、都心までの所要時間、駅からの距離、周辺環境、部屋の広さ、設備などを含めて、
入居者がその家賃に納得できるかどうか
です。
僕が最も重要視しているのは、あくまでも「適正家賃」
不動産投資では、駅からの徒歩分数が非常に重視されます。
もちろん、駅に近い方が便利です。
入居者募集や、将来物件を売却するときにも、駅に近い方が有利になる傾向があります。
しかし、僕が物件を判断するときに最も重要視しているのは、駅から何分かという数字だけではありません。
あくまでも、その物件の条件に合った適正家賃を設定できるかどうかです。
駅徒歩5分の物件でも、周辺相場や入居者の収入に対して家賃が高すぎれば、入居は決まりにくくなります。
反対に、駅から10分以上離れていても、その距離を家賃にきちんと反映し、入居者が、
「この部屋で、この家賃なら納得できる」
と感じれば、十分に選ばれます。
最近は土地価格が上昇していることもあり、駅徒歩10分以内の土地を、事業として成立する価格で仕入れることは簡単ではありません。
僕自身も、最近仕入れている物件は、駅から徒歩10分を超えるものが増えています。
現在は駅徒歩15分程度までを一つの目安にしています。
ただし、
「駅徒歩15分以内なら大丈夫」という意味ではありません。
駅徒歩15分という数字は、あくまでも判断材料の一つです。
大切なのは、その距離を含めたすべての条件が、家賃に正しく反映されているかどうかです。
たとえば、駅徒歩13分の物件を、駅徒歩5分の物件と同じ家賃で募集すれば、比較されたときに不利になります。
一方で、駅から少し歩く代わりに、
- 都心部より家賃が数万円安い
- 同じ家賃なら部屋が広い
- 建物や設備が新しい
- スーパーなど生活に必要な施設が近い
- 都心まで乗り換えなしで通える
といった納得できる理由があれば、入居者にとって十分に魅力的な選択肢になります。
つまり、
駅距離だけで物件の価値が決まるのではなく、駅距離を含めた物件の条件と家賃が釣り合っているかが重要なのです。
適正家賃とは、単に安い家賃ではない
僕が考える適正家賃とは、単に周辺物件より安い家賃ではありません。
安くしすぎれば、オーナーの収益性が下がります。
反対に、高くしすぎれば、募集期間が長くなり、入居後の負担感も大きくなります。
僕が目指しているのは、
入居者にとっては納得感があり、オーナーにとっては収益性を確保できる家賃
です。
不動産事業者は、どうしても「いくらまで家賃を上げられるか」を考えます。
家賃を高く設定できれば、表面上の利回りを高く見せられ、物件の販売価格も上げやすくなります。
しかし、僕が目指しているのは、募集できる限界の家賃を設定することではありません。
家賃を限界まで引き上げた結果、募集期間が長くなったり、短期間で退去されたりすれば、オーナーの実際の収益は安定しません。
一方、その地域の所得水準、周辺相場、駅からの距離、部屋の広さや設備に合った家賃であれば、入居も決まりやすく、長く住んでもらえる可能性が高まります。
当社では、販売するときに複数の賃料査定を取り、その中でも保守的な水準を基に想定賃料を設定しています。
これまで販売してきた物件には、駅から10分以上離れたものもあります。
それでも問題なく入居が決まってきたのは、駅距離をごまかして高い家賃を設定したのではなく、入居者が納得できる家賃を設定してきたからだと考えています。
僕が重要視しているのは、あくまでも適正家賃です。
今後チャンスがあるのは、どのような物件か
今後、僕が可能性を感じているのは、次のような物件です。
- 都心の主要駅まで30~40分程度でアクセスできる
- 乗り換えが少ない、または都心まで直通している
- 駅徒歩15分程度までを一つの目安にできる
- スーパーなど、日常生活に必要な施設が近くにある
- 都心部と比べて家賃を明確に抑えられる
- 単身者や二人世帯の需要に合った間取りになっている
- 駅距離や物件条件を正しく反映した家賃を設定できる
この中で最も重要なのは、最後の適正家賃です。
交通利便性が高くても、家賃が高すぎれば入居者から選ばれません。
駅から少し離れていても、生活しやすく、家賃に納得感があれば選ばれます。
したがって、これからの不動産投資では、
「駅から何分以内なら買う」
という機械的な判断ではなく、
「この立地、この部屋、この家賃なら、入居者は本当に選んでくれるのか」
という視点が、これまで以上に重要になります。
今後の東京の家賃をどう予想するか
僕は、今後数年間の東京の賃貸市場を、次のように予想しています。
まず、都心部の家賃がすぐに大きく下がるとは考えていません。
東京への人口集中や世帯数の増加、土地・建築コストなどを考えると、都心の家賃には引き続き上昇圧力がかかると思います。
ただし、これまでと同じ勢いで、どこまでも上がり続けるわけではありません。
入居者の所得に対して家賃が高くなりすぎたエリアでは、家賃の上昇率が鈍化したり、募集期間が長くなったりする可能性があります。
その一方で、都心よりも家賃を抑えられ、交通利便性の高い周辺区には、都心から押し出された需要が入ってくる可能性があります。
その際に選ばれるのは、必ずしも駅徒歩5分や10分以内の物件だけではありません。
駅から徒歩10分以上かかったとしても、都心へ通いやすく、生活環境が整い、何より家賃に納得感があれば、十分に需要を取り込めます。
今後は、
都心だけが上がる相場から、適正家賃で暮らせる街や物件が見直される相場へ移っていく
のではないかと考えています。
人口減少時代だからこそ、適正家賃が重要になる
人口減少時代だから、不動産投資がすべて厳しくなるわけではありません。
むしろ、需要がある街とない街、選ばれる物件と選ばれない物件の差が、これまで以上に大きくなります。
全国では人口が減っています。
一方で、東京23区では人口と世帯数が増え、家賃も上昇しています。
しかし、都心の家賃が上がり続ければ、すべての入居者がそこに住み続けられるわけではありません。
そこで選ばれるのが、
都心に通えて、生活しやすく、家賃が現実的な街と物件
です。
これからの不動産投資では、
「東京だから大丈夫」
「駅から近いから大丈夫」
「徒歩15分以内だから大丈夫」
という判断だけでは足りません。
その物件の家賃を誰が払うのか。
その人の収入で、無理なく払い続けられるのか。
駅から少し歩くことを考慮しても、その家賃に魅力があるのか。
都心との家賃差に、移動時間以上の価値があるのか。
そこまで具体的に考える必要があります。
僕自身も、単に最も高い家賃を設定できる土地や、駅から最も近い土地だけを探しているわけではありません。
都心から少し離れていても、入居者にとって無理のない適正家賃を実現できる場所に注目しています。
人口が減少し、インフレによって生活費も上昇する時代だからこそ、最後に選ばれるのは、最も高い家賃を設定できる物件ではありません。
入居者にとって、家賃と住みやすさのバランスが取れている物件です。
僕は、そのような適正家賃を実現できる街や物件に、これからの不動産投資のチャンスがあると考えています。
※2025年国勢調査の数値は人口速報集計であり、今後公表される確定値と異なる場合があります。




