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「運用中」の物件が売却済み──不動産クラファン14億円の行方

不動産クラウドファンディングを巡って、また気になるニュースが出ました。

楽待新聞の報道によると、不動産クラファン「victory fund」を運営していたカチデベロップメント株式会社が、不動産特定共同事業の廃業届を東京都に提出し、2026年7月7日に受理されたとのことです。

さらに問題なのは、ウェブサイト上では「運用中」と表示されていた複数の案件について、対象となる不動産がすでに第三者へ売却されていたことです。

物件が売却されたにもかかわらず、出資者への説明が大きく遅れ、出資金の償還も行われていない案件があると報じられています。

関係する案件に集まった出資金は、約14億円

その資金が現在どのように管理されているのか。

そして、出資者へ返還するための原資が本当に確保されているのか。

現時点では、外部からは分からない状態になっています。

問題は、物件を売却したことだけではない

不動産クラファンでは、運用期間中に物件を売却すること自体が、直ちに問題になるわけではありません。

物件を売却し、その売却代金をもとに利益を確定させ、契約に従って出資者へ元本と分配金を返還する。

これは、不動産クラファンでは通常想定される出口の一つです。

今回の問題は、物件が売却されていたにもかかわらず、サイト上では長期間にわたって「運用中」と表示されていたことです。

報道では、2025年8月に売却された案件が、その後約11カ月にわたって運用中と表示されていたとされています。

出資者に売却の連絡があったのは、2026年6月。

仮に契約書に「物件売却後は遅滞なく分配する」と記載されているのであれば、売却から長期間にわたり償還されない状態は、投資家にとって非常に大きな問題です。

つまり、論点は単なる表示ミスではありません。

売却代金がどこにあり、なぜ償還されず、なぜ説明が遅れたのか。

ここが本質です。

不動産があるから安心、とは限らない

不動産クラファンでは、よく次のような説明がされます。

「株式などと違い、実物不動産が裏付けになっています」

確かに、不動産という現物資産が存在することは、投資判断における一つの安心材料です。

しかし、本当に重要なのは、不動産が存在することだけではありません。

その不動産を誰が所有しているのか。

いくらの借入が付いているのか。

売却された場合、その代金はどこで管理されるのか。

そのお金が他のファンドや会社の運転資金に使われない仕組みになっているのか。

ここまで確認しなければ、「不動産があるから安全」とは言えません。

今回の報道でも、弁護士は、もし売却代金が別のファンドの償還や、別の不動産の購入に充てられていれば、分別管理義務違反になる可能性があると指摘しています。

ただし、外部から確認できるのは、あくまでも対象不動産が売却されたという事実までです。

売却代金が実際にどのように使われたのかについては、現時点では確認されていません。

だからこそ、出資者に対する迅速で具体的な説明が必要なのです。

高利回りには、必ず理由がある

victory fundでは、想定利回りが10%を超える案件も多く、中には12%程度の利回りや、Amazonギフト券のプレゼントが付く募集もあったとされています。

利回りが高いこと自体が、直ちに危険というわけではありません。

再生案件や権利調整が必要な案件、開発リスクを伴う案件では、そのリスクに応じて高い利益が見込まれることもあります。

しかし、高利回りには必ず理由があります。

利回りだけが高く、その根拠が分からない。

償還時期が近づくたびに、新しいファンドが募集される。

キャンペーンやギフト券によって、出資を強く促している。

運用状況の説明が少ない。

こうした兆候が重なっている場合は、慎重に見る必要があります。

新しく集めた資金で、過去の出資者への償還を行うような状態になれば、実態は不動産運用ではなく、自転車操業に近づいていきます。

新規の募集が止まった瞬間に、資金の流れも止まるからです。

「許可業者だから安心」でもない

今回、出資者からは、不動産特定共同事業法に基づく許可審査を行った行政にも、一定の責任があるのではないかという声が出ています。

気持ちは理解できます。

不動産特定共同事業は許可制ですから、一般の投資家が「行政の審査を通っているのだから安心だろう」と考えるのも無理はありません。

しかし、許可を受けていることは、将来の元本返還や利益を行政が保証しているという意味ではありません。

許可は、一定の財産要件や人的要件、業務管理体制などを審査した結果です。

許可取得後に会社の財務状況が悪化することもあります。

経営判断を誤ることもあります。

ルールに反した資金管理が行われる可能性も、ゼロではありません。

銀行が融資しているから安全。

上場企業だから安全。

行政の許可があるから安全。

有名人が広告に出ているから安全。

不動産投資では、こうした肩書きや外形的な信用だけで判断してはいけません。

最後に損失を負担するのは、出資者自身だからです。

登記簿を見れば分かることもある

今回の問題が表面化したきっかけの一つは、楽待新聞が対象物件の登記簿を取得し、所有者を確認したことです。

登記簿は、特別な資格がなければ取れないものではありません。

物件の所在地が分かれば、原則として誰でも取得できます。

登記簿を見れば、少なくとも次のようなことが確認できます。

現在の所有者は誰なのか。

いつ所有権が移転したのか。

抵当権や根抵当権が設定されているのか。

どの金融機関から、どのような担保設定を受けているのか。

もちろん、登記簿だけで会社の資金管理の全容が分かるわけではありません。

しかし、「運用中」と説明されている物件が、本当にその事業者の所有なのかを確認することはできます。

少額投資だから、そこまで調べなくてよい。

運営会社が報告してくれるから大丈夫。

そう考える人もいると思います。

ただ、投資額が100万円であっても、10件出資すれば1000万円です。

少額投資を積み重ねるうちに、自分でも気づかないほど大きな金額を、一つの業界や事業者に預けているケースがあります。

自分で不動産を持つこととの大きな違い

私は、不動産クラファンという仕組みそのものを否定するつもりはありません。

少額から不動産事業に参加できることや、使われていない不動産を再生するための資金調達手段として、有効な面もあります。

ただし、自分で不動産を所有する投資とは、リスクの種類が違います。

自分で物件を所有していれば、登記名義は自分です。

家賃がいくら入ったのかも確認できます。

管理会社を変更することもできます。

売却するか、保有を続けるかも、自分で判断できます。

一方、不動産クラファンでは、物件の選定、資金管理、運営、売却、情報開示のほとんどを、運営会社に委ねます。

つまり、投資家が買っているのは、不動産そのものだけではありません。

運営会社の信用力と、資金管理能力と、経営者のモラルも含めて買っているのです。

ここを忘れてはいけません。

投資家が確認すべきポイント

不動産クラファンへ出資する際は、少なくとも次の点を確認する必要があります。

まず、利回りの根拠です。

賃料収入を中心とした利回りなのか。

物件の値上がりや転売益を前提にしているのか。

開発や権利調整など、どのようなリスクを取っているのか。

次に、劣後出資の割合です。

運営会社がどこまで損失を負担する設計になっているのか。

借入金を含めた総事業費に対して、投資家の資金がどの位置にあるのかを確認します。

そして、運営会社の決算内容です。

売上高や利益だけでなく、現預金、借入金、純資産、債務超過の有無を見る必要があります。

さらに、過去の償還実績だけではなく、償還遅延の有無、運用期間の延長、説明の頻度、新規募集への依存度も確認すべきです。

「これまで元本割れがない」という説明だけで安心してはいけません。

元本割れが表面化する前に、新しい資金で償還を続けていれば、しばらくの間は正常に見えることもあるからです。

最も危険なのは、違和感を無視すること

今回取材を受けた出資者は、償還時期が近づくと新しいファンドが募集されることや、高利回り、ギフト券キャンペーンなどに違和感を抱いていたと話しています。

しかし、出資を続けてしまった。

これは決して他人事ではありません。

人は一度投資を始めると、自分の判断が正しかったと思いたくなります。

過去に償還された実績があると、「今回も大丈夫だろう」と考えます。

少し不自然なことがあっても、「大きな会社だから」「許可業者だから」「これまでは返ってきたから」と、自分を納得させてしまいます。

しかし、投資において最も大切なのは、違和感を覚えたときに立ち止まることです。

利回りが高くなった。

キャンペーンが増えた。

説明が減った。

償還が遅れた。

運用期間が延長された。

問い合わせへの回答が曖昧になった。

これらは、一つだけなら事情があるのかもしれません。

しかし、複数が同時に発生したら、追加投資を止め、資金の回収を優先するべきです。

不動産投資で守るべきもの

不動産投資では、利益を得ること以上に、元本を守ることが重要です。

10%の利回りを得ても、元本を失えば、取り戻すには長い時間がかかります。

高い利回りを追うよりも、誰が資金を管理しているのか。

どのような仕組みで利益が生まれているのか。

問題が起きたとき、自分にどのような権利があるのか。

ここを確認することが重要です。

今回の問題は、不動産クラファンだけの話ではありません。

サブリース。

管理会社への家賃送金。

一括借り上げ。

共同事業。

匿名組合。

すべてに共通するのは、自分のお金や収益を、他人の管理能力と誠実さに預けているということです。

「運用中」という画面表示ではなく、実際の登記はどうなっているのか。

「順調です」という説明ではなく、実際のお金はどこにあるのか。

投資家が見るべきなのは、きれいなサイトや高い想定利回りではありません。

契約、登記、決算、資金の流れ。

結局は、この地味な確認の積み重ねが、自分の資産を守るのだと思います。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



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