SUUMOリサーチセンターの調査で、首都圏の売却検討者の59.4%が、現在の不動産市況を「売却に有利」と評価したというニュースが出ました。

売却を完了した人の割合も増え、売却価格よりも「いつ売るか」を重視する人が増えているようです。
このニュースを見て、収益不動産を保有している投資家の方は、こう思うかもしれません。
「自分の物件も、今のうちに売った方がいいのではないか」
結論から言います。
今回の数字は、今すぐ売れというサインではありません。
ただし、保有物件の出口を一度点検した方がいいというサインではあります。
数字だけを見て「今が天井だ」「急いで売ろう」と判断するのも違いますし、「実需の調査だから収益不動産には関係ない」と無視するのも違います。
重要なのは、このニュースを自分の保有物件にどう置き換えて考えるかです。
この調査は投資物件の話ではない。それでも無関係ではない
まず、ここは正直に切り分ける必要があります。
今回の調査対象は、主に自宅や相続した不動産などの売却を検討している一般の方です。
家賃収入を得るために収益不動産を保有している投資家とは、売却する理由も違えば、価格の見方も違います。
そのため、
「実需の売却検討者が売り時だと感じている」
ということと、
「投資用アパートが高く売れる」
ということは、必ずしもイコールではありません。
それでも、投資家がこのニュースを読む意味はあります。
なぜなら、実需不動産も収益不動産も、同じ首都圏の不動産市場の中で売買されているからです。
売却に有利だと感じる人が増え、実際に売り出される物件が増えてくれば、買い手が比較できる物件の数も増えます。
買い手の選択肢が増えれば、当然ですが、売る側は今まで以上に選ばれる理由を求められます。
つまり、今回の調査は、あなたの物件がいくらで売れるかを直接示したものではありません。
しかし、数年後にあなたが出口を迎えたとき、売却市場がどの程度混み合っているかを考える材料にはなります。
「実需の話だから関係ない」と切り捨ててしまうと、市場全体の温度を読み違える可能性があります。
「6割が売却に有利」を、天井のサインと決めつけない
今回のニュースを見て、
「みんなが売り時だと思い始めたということは、今が不動産価格の天井なのではないか」
と考える人もいるでしょう。
確かに、売り手が一斉に強気になり、売り物件が増えれば、需給が変化する可能性はあります。
不動産に限らず、市場参加者の多くが同じ方向を向いたときに、相場が転換することはあります。
ただ、私はこの数字だけを見て、現在が不動産市況の天井だとは判断しません。
日々、土地や収益不動産の仕入れをしている現場の感覚では、売り物件が急増し、完全な買い手市場に変わったという印象までは、まだありません。
ここで注意したいのが、アンケートでの意識と、実際の行動は別だということです。
「今は売り時だと思う」という回答が増えても、実際に査定を取り、売却を決断し、売り出す人が同じ割合で増えるわけではありません。
住み替え先が決まらない。
住宅ローンの残債がある。
税金が気になる。
家族の意見がまとまらない。
売却した後の資金の置き場所がない。
不動産は株式のように、売りたいと思った翌日にすぐ売却できるものではありません。
したがって、59.4%という数字を、そのまま売却物件が約6割増えるという意味で受け取ってはいけません。
今回の数字は天井を当てる材料ではなく、売り手の心理が強気に傾いているという一つの警告として見るべきです。
相場の天井を当てにいくのではなく、売り物件が増えた場合でも、自分の物件が買い手から選ばれるかを点検する。
投資家がやるべきことは、こちらだと思います。
注目すべきは「価格より売却時期」という変化
私が今回の調査で最も気になったのは、59.4%という数字そのものではありません。
売却価格よりも、売却する時期を重視する人が増えているという点です。
多少価格を譲ってでも、今のうちに売却しておきたい。
その心理の背景には、金利に対する警戒感があると私は見ています。

金利が上がると、これから不動産を購入する人の借入能力に影響が出ます。
同じ年収、同じ毎月返済額でも、金利が上がれば借りられる金額は小さくなります。
借りられる金額が小さくなれば、買い手が不動産に出せる価格の上限も下がります。
売り手が「価格より時期」を重視し始めているのは、買い手の資金調達力が今より弱くなる前に売却したい、という心理の表れなのかもしれません。
これは、実需不動産だけの問題ではありません。
収益不動産の価格も、最終的には買い手がどれだけ融資を受けられるかに大きく左右されます。
投資家が高い価格で買いたいと思っても、金融機関が融資を出さなければ売買は成立しません。
そのため、出口戦略を考える際には、単純な利回りやIRRだけではなく、
利上げの前に売るのか、利上げ後も保有できる物件なのか
という時間軸を加える必要があります。
例えば、あと1年間保有すれば家賃収入が増えるとしても、その間に買い手の融資枠が縮まり、売却価格が下がれば、結果的に手取りが減る可能性があります。
一方で、多少金利が上がったとしても、安定した家賃収入があり、残債が減り続ける物件であれば、無理に急いで売る必要はありません。
だからこそ、売るか持つかは、現在の価格だけでは決められないのです。
大切なのは「みんなが売るから売る」ではない
ここまで読むと、
「金利が上がる前に、早く売った方がいいのではないか」
と思われるかもしれません。
しかし、私が言いたいのは逆です。
みんなが売るから売るのではなく、自分の物件がどのような市況でも選ばれる物件なのかを確認することが先です。
不動産の価値は、最後はその場所に住みたい人がいるかどうかで決まります。
私は、不動産投資で最も重要なのは、建物よりも土地の需要だと考えています。
売り手が強気でも弱気でも、金利が上がっても下がっても、入居者が安定して入り続ける立地の物件は、出口でも評価されます。
反対に、新築時の高い家賃設定や、将来の値上がり期待だけで収支を作っている物件は、買い手が物件を選別し始めたときに厳しくなります。
売却物件が少ない時期は、多少条件の悪い物件でも売れることがあります。
しかし、売却物件が増えれば、買い手は立地、家賃、築年数、修繕状況、融資条件を比較するようになります。
そのときに価格を下げなければ売れない物件と、適正価格で買い手が付く物件に分かれていきます。
今回の「6割が売却に有利と考えている」というニュースは、その選別が将来強まる可能性を示しているのだと思います。
今、投資家が確認すべき2つのこと
今回のニュースを見て、慌てて売却査定を依頼する必要はありません。
その前に、保有物件について、次の2点を確認してみてください。
一つ目は、金利が上がり、買い手の融資枠が縮小しても選ばれる物件か。
駅からの距離、賃貸需要、周辺家賃との乖離、建物の状態、将来の修繕負担などを冷静に確認します。
高い家賃を取れているかではなく、その家賃が将来も維持できるのかを見ることが大切です。
二つ目は、今売却した場合、残債と税金、売却費用を差し引いて、いくら手元に残るのか。
査定価格だけを見ても意味はありません。
重要なのは売却価格ではなく、最終的な手取りです。
さらに、金利が上昇した場合の売却価格や、空室率が上がった場合の収益も想定しておく必要があります。
私が考える岩盤経営とは、市況が良いときに最も高く売ることではありません。

市況が変わっても、売る、持つ、借り換えるという複数の選択肢を残しておくことです。
売り物件が増え、買い手が慎重になってから出口を計算しても、その時点では選択肢が少なくなっています。
市況が比較的落ち着いている今だからこそ、出口の手取りを一度数字にしておくべきです。
まとめ
今回の調査結果を見て、私が感じたことは次のとおりです。
「6割が売却に有利と考えている」という数字は、売却物件が6割増えるという意味ではありません。
意識と実際の行動には、大きな差があります。
そのため、この数字だけを見て不動産市況の天井と判断する必要はありません。
ただし、売り手心理が強気に傾いていることは、市場の変化を知らせる一つのサインです。
そして、「価格より売却時期」を重視する人が増えている背景には、金利上昇への警戒感があると考えられます。
買い手の借入能力が縮小すれば、収益不動産の出口価格にも影響します。
それでも、最も重要なのは相場の天井を当てることではありません。
金利が上がっても、売り物件が増えても、入居者と買い手から選ばれる物件を保有することです。
売れるときに売るのではなく、いつでも売れる状態で持っておく。
そして、売らなくても安定したキャッシュフローが残る状態をつくる。
これが、私の考える岩盤経営です。
まずは、お手元の物件について、
残債はいくらあるのか。
売却時の税金はいくらかかるのか。
金利が上昇した場合、いくらで売れる可能性があるのか。
この3点を差し引いた「出口の手取り」を、一度紙に書き出してみてください。
その数字を確認したうえで、売るか、持ち続けるかを判断することが大切です。
保有物件の売却や出口について迷われている方は、ご相談ください。
相場が高いか安いかだけではなく、建てた後に安定して回るのか、将来の出口で選ばれるのか。
日々、土地の仕入れと収益不動産の企画・販売を行っている現場の立場から、率直にお答えします。
※本記事に記載した相場観や今後の見通しは、筆者個人の見解です。不動産投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任でお願いいたします。




