健美家の「民泊は本当に追い風か?規制と緩和の二極化すすむ」という記事を読みました。
民泊を考えるうえで、地域のルールや建物の条件、運営体制まで確認する必要があるという内容です。
私が特に気になったのは、規制が変わるリスクでした。
今回の記事を読み、さらに行政の公表資料を確認する中で、許可を取った後の運営体制についても、考えておく必要があると感じました。
参考:健美家「民泊は本当に追い風か?規制と緩和の二極化すすむ」
投資した後に、事業の前提が変わる
不動産への投資は、購入した時点で終わるものではありません。取得や改修にかけた費用を、その後の運営で回収していきます。
その途中で営業できる日数が減ったり、新たな人員配置が必要になったりすれば、当初の収支計画は変わります。
需要があるかどうかに加えて、その需要に応えられる条件で営業を続けられるか。私は、そこまで考える必要があると感じています。
当社でも、こうした規制変更の可能性を考え、民泊への参入を見送ったことがあります。
例えば新宿区は、2026年9月8日の区長説明で、住宅宿泊事業について商業系用途地域でも年間120日までに営業を制限し、経過措置後は既存施設にも適用する方針を示しました。
これは条例改正に向けた方針であり、すでに施行された規制という意味ではありません。それでも、既存事業も将来の見直しと無関係ではないことが分かります。
東京23区でも、ルールと適用時期は異なる
同じ東京23区でも、民泊・旅館業のルールは一律ではありません。「規制が厳しくなる」といっても、すでに施行されたもの、改正は済んでいても適用前のもの、まだ方針の段階のものがあります。
豊島区では、住宅宿泊事業の区域・期間の制限が2026年12月16日から適用されます。営業できる期間は春・夏・冬休みの年間120日間に限定され、期間制限は既存施設にも適用されます。新宿区の改正方針とは、制度変更の段階が異なります。
一方、墨田区では2026年4月1日に、住宅宿泊事業と旅館業に関する新ルールが施行されています。江東区でも同年7月1日に旅館業の改正条例が施行され、施設内への常駐が義務化されました。ただし、江東区の既存施設の勤務体制には従前の規定が適用され、施行前に受理された申請にも経過措置があります。
出典:墨田区・民泊対策の取組、江東区・旅館業法施行条例の改正
板橋区の住宅宿泊事業では、住居専用地域に期間の制限がありますが、家主居住型など、苦情に速やかに対応できる一定の施設は、この地域・期間制限の対象外です。区名だけで判断せず、事業の制度、用途地域、運営形態まで確認する必要があります。
旅館業の許可を取れば安心なのか
民泊を検討する中では、旅館業の許可を取得して運営する方法もあります。
厚生労働省は、民泊サービスに必要な手続きとして、旅館業法上の許可、住宅宿泊事業法の届出、特区民泊の認定を挙げています。旅館業の許可を取り、基準に沿って運営することは、正規の事業の進め方です。
ただし、旅館業もルールの見直しと無関係ではありません。
先ほどの新宿区の方針には、旅館業について小規模施設の新設を禁止し、フロントの設置、従業員の常駐、対面でのチェックインを義務付ける内容も含まれています。
旅館業の許可を取得することで、将来の規制変更まで避けられるとは言い切れないのです。
出典:新宿区・住宅宿泊事業および旅館業における新たなルールの説明
許可があっても、運営体制が伴っているとは限らない
もう一つ、私が気になっているのが、申請上の運営体制と実際の運営が一致しているのか、という点です。
常駐することになっているのに人がいない。すぐに駆け付けられる体制としていても、実際には対応できる人がいない。こうした問題です。
この点について調べると、京都市では実際に処分が行われていました。
2026年8月31日、駐在義務と対面での面接義務に違反し、是正の措置命令にも従わなかった4営業者に、営業停止と過料の処分が行われています。
旅館業の許可を受けた施設でも、必要な運営体制を守っていなければ、営業を続けられなくなる事例があるということです。
ただし、この公表資料から、申請時から虚偽だったのか、許可後に体制を維持しなくなったのかまでは分かりません。ここは分けて考える必要があります。
人を雇っていることと、対応できること
例えば、近くに住む人をアルバイトとして雇い、緊急時の対応を任せる。その雇用形態だけで不正と判断することはできません。
確認すべきなのは、その施設に求められる体制を実際に満たしているかです。
国の管理要領には、一定の要件を満たせばフロントを代替する仕組みや、おおむね10分程度で職員等が駆け付ける体制が示されています。一方で、自治体独自の駐在ルールもあります。
施設内での駐在が必要な場合には、近所から呼び出せるという説明だけでは足りません。
出典:厚生労働省・フロント要件の説明資料、京都市・駐在規定の説明
私が気になるのは、契約書や担当者の名前があることで、確認が終わってしまうことです。
宿泊者がいる時間帯を、誰が担当するのか。夜間でも連絡がつくのか。その人が休みのときは誰が代わるのか。複数の施設で同時に問題が起きても対応できるのか。
そうした実際の運営まで考えて、初めて体制が整っているといえるのだと思います。

運営の実態には、すでに確認が及んでいる
京都市の2026年度の調査仕様書には、許可・届出内容と予約サイトの掲載内容との整合、施設外フロントの実態、早朝・夜間の駐在状況などを確認することが記載されています。
駐在確認については、営業者等に個別の事前連絡をせずに行う設計です。
書面の確認に加えて、実際に人がいるかどうかまで調べる仕組みがあるわけです。
私は今後、こうした運営実態への確認が、さらに厳しくなる可能性があると考えています。
これは全国一律の取締り強化が決まったという話ではなく、今回確認した行政の動きからの私の見方です。
事業者にとっては、規制が新しくなることだけがリスクではありません。既存のルールについて、履行状況の確認や是正が徹底されることも、収支に関わります。
必要な人件費や管理費を十分に織り込んでいなければ、体制を整え直したときに、想定していた利益が残らなくなる可能性があります。
現時点の結論
今回調べて、旅館業の許可を取得した後も、運営体制を維持する責任が続くことを改めて感じました。
これから始めるなら、現在のルールを守るための費用を織り込み、さらに条件が変わった場合にも事業が成り立つかを考えておく必要があります。
営業日数が減ったらどうなるのか。人員の配置を増やす必要が生じたら対応できるのか。宿泊事業が難しくなった場合、別の用途に切り替えられるのか。
購入や改修を進めた後では、簡単には元に戻せません。
私は、許可を取れるかに加えて、必要な運営体制を維持しながら長く続けられるかを重視したいと考えています。
※制度・行政方針の記述は、2026年9月27日時点で確認した公表資料に基づきます。






