今日の社内ミーティングで、改めて危機感を持ったことがあります。
それは、これだけAIが普及しているにもかかわらず、社員がAIにあまり関心を持っていないことです。
新しい技術が出てきたからといって、すぐに飛びつけばよいとは思っていません。
ただ、AIに触ろうともせず、今までの仕事の進め方をそのまま続けようとすることには、大きなリスクがあると感じています。
5年後、10年後も会社が生き残るためには、過去の成功体験だけに頼らず、今からAIと共存する方法を考えなければならない。
そして私は、AIを社員削減のためではなく、今いる社員と一緒に新しい事業へ進むための道具として使いたいと考えています。
「AIが仕事を奪う」の本当の意味
「AIが人の仕事を奪う」とよく言われます。
もちろん、これまで人が行っていた作業の一部を、AIが担うようになることは増えていくと思います。
ただ、私が本当に怖いと感じているのは、AIそのものに仕事を奪われることではありません。
現在のやり方から抜け出せない人や会社が、変化した環境の中で取り残されることです。
実際に周囲を見ていると、仕事を改善しようとする人は、AIについて分からないことがあっても、自分で調べたり試したりしています。
一方で、AIを使っていない人の多くは、能力がないというより、何を相談すればよいのか、何をAIに任せられるのかに気づいていないのだと思います。
その差は、今は小さく見えるかもしれません。
しかし、AIを使って試行錯誤する人には、日々の経験が積み重なります。
半年、1年、5年と時間がたてば、その差は圧倒的なものになる可能性があります。

何を相談すればよいか分からないなら、それをAIに相談すればよい
社員からすれば、「AIを活用しよう」と言われても、どこから始めればよいか分からないのかもしれません。
だから、最初から高度な使い方を覚える必要はないと思っています。
まず、自分が普段行っている業務を書き出す。
そして、その内容をAIに説明して、こう聞けばよいのです。
「この業務の中で、AIを使って効率化できるものはありますか」
「繰り返し行っている作業の中で、自動化できるものはありますか」
「そもそも、やめてもよい仕事や、進め方を変えたほうがよい仕事はありますか」
何をAIに相談すればよいか分からないという悩み自体を、AIに相談してみる。
そこから会話を重ねることで、自分では当たり前になっていた手間や、昔から続けているだけの業務に気づける可能性があります。
大切なのは、最初から正解を出すことではありません。
まず触ってみることです。
勉強会は、触った後に行うほうが意味がある
会社がAIの勉強会を開き、使い方を一から教える方法もあります。
ただ私は、まず各自がある程度AIに触れてから勉強会を行うほうがよいと考えています。
実際に使ってみなければ、自分が何につまずくのかも分かりません。
うまく質問できなかった。
期待した答えが返ってこなかった。
どこまで情報を入力してよいのか迷った。
試してみたが、かえって時間がかかった。
そうした疑問や失敗を持ち寄るからこそ、勉強会が実際の業務改善につながります。
失敗することは仕方がありません。
成功例だけでなく、失敗例も社内で共有すれば、同じところで悩む人を減らせます。
一人の経験を一人だけのものにせず、会社全体の知識に変えていくことが重要です。

AIは、人を減らすためではなく、時間を生み出すために使う
AI活用というと、すぐに人員削減の話になることがあります。
しかし、私が目指しているのは、現在の社員を減らすことではありません。
私自身、以前は一定の間隔で内容を確認していたレポートを、AIによって自動で提出される仕組みに変えました。
1回の確認に長い時間がかかるわけではありません。
それでも、何度もサイトを開いて確認するたびに、目の前の仕事が中断されます。
今は、その確認と提出をAIに任せることで、これまで使っていた時間と意識を別の仕事に回せるようになりました。
一つひとつは短い作業でも、毎日、毎週、何度も繰り返していれば、見えない負担が積み重なります。
AIによってその時間を生み出せれば、今いる社員のまま、新しい仕事へ挑戦できます。
新しく人を採用しなくても、会社の事業を広げられる可能性が生まれるのです。
すでに行っている賃貸管理を、無理なく事業として広げる
当社では、これまでに物件を購入していただいた投資家から依頼を受け、実際に賃貸管理も行っています。
したがって、これから管理業をゼロから始めるということではありません。
すでに管理の実務を行い、入居者への対応、契約関係の書類、物件情報の整理、オーナーへの報告など、継続的に必要となる業務も経験しています。
私が考えているのは、これまでの実績を土台に、賃貸管理を会社の事業の一つとしてさらに広げていくことです。
ただ、管理業は、対象となる物件を増やしたからといって、すぐに大きな利益が出る事業ではありません。
管理戸数を増やせば、日々の対応や事務作業も着実に増えていきます。
新たに人を雇えば、事業が計画どおりに進まない場合でも、会社には長期的に雇用を支える責任があります。
管理事業の拡大を急いだ結果、現在の本業がおろそかになってもいけません。
私が慎重になっていた最大の理由は、利益が育つまでの期間も安定した運営を続け、本業と雇用の両方を守れる体制をつくれるかという点でした。
しかし、AIを使って定型的な作業を補助し、今いる社員の時間を生み出せるなら、「事業を広げるには、まず人を増やさなければならない」という壁を低くできます。
入居者やオーナーとの関係づくり、例外的な問題への対応、最終的な判断は人が担う。
一方で、書類作成や情報整理、報告など、AIが補助できる部分は積極的に任せる。
そのように人とAIの役割を分ければ、これまでの管理実績を生かしながら、今いる社員と一緒に事業を広げられると考えています。
管理事業の拡大から新たな利益が生まれれば、それは社員の給与を上げる理由にもなります。
AIで人件費を削るのではなく、AIで一人ひとりが生み出せる価値を高め、その成果を社員へ返していく。
これが、私の考えるAI活用です。

過去の成功を、今後の足かせにしない
会社には、これまで積み重ねてきた成功体験があります。
その経験があったからこそ、現在の会社があります。
過去を否定する必要はありません。
ただし、過去に成功した方法が、これからも同じように通用するとは限りません。
むしろ、うまくいった経験が強いほど、「これまでのやり方で問題ない」と考え、変化に気づくのが遅れることがあります。
私は、過去の成功が今後の足かせになってほしくありません。
社員にも、過去の成功体験がこの先も続くと思ってほしくありません。
守るべきなのは、昔からの仕事の進め方ではなく、会社と社員の未来です。
そのために必要なら、現在の業務を書き出し、そもそも必要な仕事なのかというところから見直すべきだと思います。
社員が気づいていないなら、方向を示すのは経営者の仕事
AIに関心を持たない社員を見て、「本人の問題だ」と片づけることは簡単です。
しかし、私はそれだけではいけないと考えています。
社員がAIで何を変えられるのかに気づいていないなら、経営者が方向性を示さなければなりません。
AIを使える環境を用意する。
試すための時間をつくる。
社外秘や個人情報をどこまで扱ってよいのか、情報管理のルールを定める。
失敗を共有できる場をつくる。
そして、AIによって業務を改善したり、新しい仕事を生み出したりする姿勢を、評価や昇給にも反映する。
そこまで整えることが、会社側の責任だと思います。
そのうえで社員には、自分の業務を書き出し、AIと会話し、まず一つ試してほしい。
会社と社員のどちらか一方だけが変わればよいのではありません。
経営者が方向を示し、社員が最初の一歩を踏み出す。その両方が必要です。
社名に込めた「Direction」には、二つの意味がある
当社の社名「Lidix」は、Life、Direction、Expertを組み合わせたものです。
当社の公式サイトでは、価値ある住宅を提供することで豊かな生活を歩み、人生の一つの方向性を指し示すお手伝いをする専門家集団でありたい、という思いを紹介しています。
この「方向性」には、私の中で二つの意味があります。
一つは、お客様に対して、不動産を通じて人生の一つの方向性を示すことです。
もう一つは、社員に対して、これからの人生の一つの方向を示すことです。
AIを使うよう命令するだけでは、方向を示したことにはなりません。
なぜ今変わる必要があるのか。
AIによって、どのような仕事や事業に挑戦できるのか。
それが会社の利益や本人の給与、将来の働く力にどうつながるのか。
そこまで伝え、進める環境をつくることが、経営者である私の役割だと思っています。

現時点の結論
私なりの現時点の結論は、AIと共存することは、人を減らすことではなく、今いる人と会社の可能性を広げることです。
まず、自分の業務を書き出す。
何をAIに任せられるか分からなければ、そのことからAIに相談する。
一つ試し、うまくいかなければ、その失敗を共有する。
そして、昔から行っている仕事が本当に必要なのかというところまで見直していく。
経営者は、社員へ「AIを使え」と言うだけではなく、会社がどこへ向かうのか、AIを何のために使うのかを示さなければなりません。
社員は、最初から使いこなそうとせず、まず触ってみる。
その小さな一歩の積み重ねが、5年後、10年後の大きな差になると思います。
私は、AIと共存することで、今よりさらに少人数で高い利益を生み出せる会社になれると信じています。
そこで生まれた時間と利益を、新しい事業と社員の給与へつなげていく。
過去の成功を守り続ける会社ではなく、変化に合わせて自分たちの仕事をつくり直せる会社でありたい。
経営者にも社員にも、まずは今日、自分の業務を一つ書き出し、AIとの会話を始めてほしいと思います。




