ビジネスと不動産経済を本気で考えるブログ

中国人が売り始めたら、東京のマンション価格は下がるのか――「爆買い終了」から考える市場の変化

中国人が日本の不動産を買っている。

ここ数年、この話題は何度も報道されてきました。

円安を背景に中国人投資家が東京のマンションを買い、その結果、日本人が買えないほど価格が上がった。そんな単純な説明で語られることも少なくありません。

ところが、楽待チャンネルの「売り始めた中国人外国人のマンショントラブル『中華まん』の実態/中国鎖国化で日本の不動産価格に影響大/中国人による不動産投資は終了?」を見て、状況はすでに次の局面へ動き始めていると感じました。

動画では、中国本土から日本への不動産投資が急速に冷え込み、湾岸のタワーマンションなどでは売却の動きも出始めていると話されています。

ただ、私がこの動画を見て考えたのは、「中国人が売り始めるから、マンション価格が下がる」という単純な話ではありません。

これまで一括りにされてきた外国人の買い手が、目的や資産規模、居住地によって分かれ始めたこと。

そして、不動産会社は「外国人が買うかどうか」ではなく、どの買い手が、何のために、どの物件を買っているのかまで見なければならないということです。

※本記事は、上記の楽待チャンネルの動画を参考に、外国人による不動産取得と今後の市場について私なりに考えた内容です。動画内には取材に基づく見解や予測が含まれており、将来の価格変動を断定するものではありません。

日本に住む外国人は、すでに412万人を超えている

最初に押さえておきたいのは、外国人は旅行で日本を訪れる人だけではないということです。

出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人となり、初めて400万人を超えました。

このうち中国人は93万人を超えています。

東京では、外国人は一時的な観光客ではなく、住宅を買い、子どもを学校へ通わせ、地域で生活する住民になっています。

動画では、文京区の学校区を重視してマンションを選ぶ中国人世帯や、港区のインターナショナルスクールを意識して住み替える富裕層の例が紹介されていました。

これは、短期的な値上がりを期待する投資需要とは違います。

外国人需要を考えるとき、海外から投資目的で買う人と、日本で暮らすために買う人を分けて見る必要があります。

 動画では、今後どうなると見ているのか

動画で示されていた見通しは、中国人による購入がすべてなくなるというものではありません。

大きく減ると見られているのは、中国本土から新たに日本へ投資・移住しようとする中間層やアッパーミドル層です。

日本側では在留資格や永住許可をめぐる環境が変わり、中国側でも人と資金の海外移動に関する管理が強まっています。

中国では、対外投資を管理する新しい規定が2026年7月1日に施行されました。また、高リスクの国・地域などへの渡航を必要に応じて思いとどまらせることができる出入国管理規定も、2026年9月15日に施行されます。

ただし、この規定で日本が自動的に対象になると決まったわけではありません。動画では、日中関係の悪化を背景に、日本が対象として意識される可能性があるという見方が示されていました。

将来も日本に住み続けることが難しいと判断すれば、日本の不動産を持つ理由は弱くなります。

動画では、保有物件を売って中国へ戻る人や、ヨーロッパ、タイ、マレーシアなどの第三国へ移る人が増え、特に湾岸タワーマンションでは売却が出始めていると話されていました。

こうした売却は、今後1年ほどでさらに増える可能性があるというのが、出演者の見通しです。

金利上昇によって日本人の購入余力も弱くなるなか、中国本土からの買いまで減れば、一部の中古マンション価格には下押し圧力がかかる可能性があります。

一方で、すでに日本に住む中国人、複数国の居住権などを持つ超富裕層、都心一等地で注文住宅を建てる層の需要は残るとされています。

さらに、中国本土に代わって、台湾やシンガポールなどからの投資も続くと見られています。

動画の見通しを一言で整理すると、中国人需要の消滅ではなく、買い手と購入される物件の選別が進むということだと思います。

 

ここからは私の見方――東京のマンションは暴落するのか

ここからは、動画の見通しを踏まえた私自身の考えです。

中国人所有者の売却が増えれば、湾岸タワーマンションなど一部の中古市場には影響が出る可能性があります。

海外からの買いが減り、国内の買い手も住宅ローンを組みにくくなれば、これまでの価格を支えてきた力は弱くなります。

しかし、それだけで東京のマンション全体が一斉に下がるとは考えていません。

そもそも、外国人による取得の実態は十分に把握できていません。

国土交通省の調査では、東京23区の新築マンションを取得した国外居住者は、ここ数年おおむね年間300件前後で、直近では台湾居住者が最も多いとされています。

ただし、この調査で把握できるのは、登記上の住所が国外にある取得者です。

日本に住む外国人や、日本国内に設立した法人を通じた取得までは、この数字だけでは分かりません。

外国人が価格をどこまで押し上げたのか。

どの地域で売りが増えているのか。

実需と投資の割合はどうなっているのか。

分からないことが多い以上、「中国人が売るから暴落する」と断定するのは早いと思います。

影響が大きくなりやすいのは、外国人投資家による短期の値上がり期待を前提にしていた物件です。

反対に、教育環境、交通利便性、生活のしやすさなど、そこに住みたい理由がある物件は、買い手の国籍が変わっても需要が残ります。

不動産価格を最後に支えるのは、「誰かが買ってくれるはず」という期待ではなく、その場所と建物が持つ実際の価値だと思います。

「中華まん」の問題は、国籍よりも管理の設計にある

動画では、中国系の居住者や所有者が多いマンションを、業界の一部で「中華まん」と呼ぶことがあると紹介されていました。

共用廊下への私物、禁止されている民泊、住宅用の部屋での飲食提供など、生活習慣や言葉の違いから生じるトラブルも語られています。

ただ、私はこれを「外国人だからルールを守らない」という話だけで終わらせるべきではないと思います。

管理規約も総会も議事録も日本語だけであれば、内容を理解できない所有者は管理に参加しにくくなります。

もちろん、規約に違反する行為には厳しく対応する必要があります。

その前提として、守るべきルールを相手が理解できる形で伝えることも必要です。

管理規約や重要なお知らせを多言語化する。

日本語と外国語の両方が分かる居住者に、管理組合との橋渡しをお願いする。

民泊や共用部の使い方を入居時に説明する。

居住者の国籍が多様になるなかで、このような運営ができるマンションと、できないマンションでは、将来の住みやすさにも資産価値にも差が出ると考えています。

不動産会社は、出口の買い手を細かく見る必要がある

今回の動画は、不動産を開発し、販売する側にとっても重要な内容だと思います。

土地を仕入れ、法令や周辺環境を調べ、建物を企画し、融資を受け、工事を進め、最後に販売・引渡しを行う。

この事業では、土地を買ったときの市場と、完成して販売するときの市場が同じとは限りません。

特に、海外投資家の需要を強く見込んだ商品では、国際関係、ビザ、資金移動の規制が変わるだけで、想定していた買い手が短期間で減る可能性があります。

だからこそ、仕入れの段階で次のような点を確認する必要があります。

– 中国本土からの投資が止まっても、国内の実需で販売できるか
– 住宅ローン金利が上がっても、日本人の所得で買える価格か
– 特定の国や顧客層だけに依存した商品企画になっていないか
– 販売期間が延びても、金利と在庫コストを負担できるか
– 投資目的の買い手が減っても、住みたいと思える立地と間取りになっているか

外国人需要は、不動産市場にとって大切な買い手の一つです。

しかし、それを永遠に続く前提として事業収支を組むのは危険です。

売れる理由が「円安だから」「海外の買い手がいるから」だけでは、外部環境が変わったときに出口を失います。

開発事業では、買い手の変化に耐えられる価格、商品、資金計画をつくることが、これまで以上に重要になると思います。

 

現時点の結論

私なりの現時点の結論は、中国人による日本の不動産投資がすべて終わるわけではないということです。

中国本土から新たに入ってくる中間層やアッパーミドル層の投資は弱まり、一部では売却も増える可能性があります。

一方で、日本に生活基盤を持つ中国人、制度変更の影響を受けにくい超富裕層、台湾など他地域からの投資まで消えるわけではありません。

これから起こるのは、外国人需要の消滅ではなく、買い手と物件の選別だと思います。

湾岸のタワーマンション。

教育環境を重視した文教地区の住宅。

都心の超高額な注文住宅。

同じ外国人需要でも、購入する人、目的、資金の出どころが違えば、市場の動きも同じにはなりません。

また、外国人居住者が増えるマンションでは、国籍を理由に対立するのではなく、管理規約を理解できる形で共有し、守らなければならないルールを明確にする必要があります。

不動産会社が見るべきなのも、「中国人が買うか、売るか」という大きな見出しだけではありません。

誰が、何のために、その物件を買うのか。

その買い手が減っても、別の実需に選ばれるのか。

販売までの時間が延びても、事業として利益を残せるのか。

外国人マネーの変化は、不動産価格が本来の需要と収益力で評価されているかを見直すきっかけになるのではないでしょうか。

参考資料

楽待 RAKUMACHI「[【売り始めた中国人】外国人のマンショントラブル『中華まん』の実態/中国鎖国化で日本の不動産価格に影響大/中国人による不動産投資は終了?](2026年9月2日公開)
– 舛友雄大氏「中国人が日本の不動産を売り始めている件」(2026年8月17日)

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。

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