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大家の法人化、合同会社と株式会社はどちらを選ぶべきか

大家の法人化は「合同会社」と「株式会社」どちらがいいのか

不動産投資を続けていると、ある程度の規模になったタイミングで必ず出てくるのが「法人化」の話です。

今回、読者様からも質問がきたので私なりの考えをブログにしました。

個人のまま不動産所得を受け取るのか。

それとも法人を作って、法人で不動産経営をしていくのか。

これは単なる節税の話ではありません。

社会保険、所得分散、相続、家族への引き継ぎ、経営権のコントロールまで関わってくる、かなり大きな判断です。

特に60代以降の大家さんの場合、法人化を考える理由は一つではありません。

定年退職によって会社の健康保険から外れ、国民健康保険に切り替わる。
そのとき、不動産所得が大きいと、健康保険料の負担がかなり重くなることがあります。

また、親が所有しているアパートや土地がある場合、家賃収入が親に集中して、所得税や住民税、相続税の問題が大きくなることもあります。

そう考えると、法人を作って不動産経営の受け皿を作ることには、一定の意味があります。

ただ、そこで多くの人が迷うのが、

合同会社にするか、株式会社にするか

という問題です。

一般的には、合同会社のほうが設立費用が安く、手続きもシンプルです。
一方、株式会社は設立費用も高く、定款認証や役員登記など、手間も増えます。

この部分だけを見ると、合同会社のほうが良さそうに見えます。

しかし、不動産投資用の法人を作る場合、設立費用だけで判断するのは少し危険です。

なぜなら、不動産経営は長期戦だからです。

一度法人を作って、その法人で物件を取得すれば、10年、20年、場合によっては次の世代までその法人を使い続けることになります。

つまり、法人の形を決めるということは、単に会社を作るだけではなく、将来の資産管理の器を作るということです。

合同会社のメリットは「安さ」と「シンプルさ」

まず、合同会社の一番大きなメリットは、設立費用が安いことです。

株式会社の場合、定款を公証役場で認証してもらう必要があります。
そのため、登録免許税や定款認証費用などを含めると、設立時の実費だけでも合同会社より高くなります。

一方、合同会社は定款認証が不要です。
そのため、設立費用を抑えやすく、比較的シンプルに作ることができます。

また、維持コストの面でも合同会社にはメリットがあります。

株式会社の場合、役員には任期があります。

非公開会社であれば定款で最長10年まで伸ばすことができますが、それでも任期が来れば役員変更登記が必要になります。

これに対して、合同会社には株式会社のような役員任期の仕組みがありません。

そのため、登記のやり直しという面では、合同会社のほうが手間は少なくなります。

さらに、株式会社には決算公告の義務があります。

毎年の決算内容を官報や電子公告などで公表する必要があります。

実務上、小規模な法人ではきちんと公告していないケースもあるようですが、法律上は義務です。

このように、設立費用や維持管理の手間だけを見ると、合同会社のほうが軽いのは間違いありません。

だから、ひとりで小さく法人を作り、家族を巻き込まず、自分だけでシンプルに運営していくなら、合同会社は十分に選択肢になります。

ただし、合同会社には「1人1議決権」の注意点がある

合同会社を選ぶときに注意したいのが、議決権の考え方です。

株式会社の場合、基本は「1株1議決権」です。

多く出資して多くの株を持っている人ほど、会社に対する発言権が強くなります。

たとえば、100株のうち90株を持っていれば、原則として90%の議決権を持つことになります。

一方、合同会社は原則として「1人1議決権」です。

出資額が多いか少ないかではなく、社員1人につき1票という考え方です。

たとえば、親が900万円を出資し、子どもが100万円を出資したとします。
出資割合で見れば、親が90%、子どもが10%です。

しかし、合同会社で何も定めていなければ、議決権は親1票、子ども1票になる可能性があります。
つまり、議決権としては50%ずつになってしまうのです。

これは、不動産経営ではかなり大きな問題になることがあります。

たとえば、親は物件を売却したい。
でも、子どもが反対している。

親は会社を解散したい。
でも、家族の一部が反対している。

こういうとき、出資額では親が圧倒的に多くても、議決権の設計を間違えていると、意思決定が進まなくなる可能性があります。

もちろん、合同会社でも定款で議決権のルールを変えることはできます。
出資割合に応じて議決権を持つように設計することも可能です。

ただし、最初にきちんと設計しておく必要があります。

「合同会社は安いから」と簡単に作ってしまい、あとから家族を社員に入れた結果、経営権が分散してしまう。

これは避けたいところです。

利益配分の自由度にも注意が必要

合同会社は、会社法上は利益の配分を比較的自由に決めることができます。

たとえば、出資割合とは違う割合で利益を分配することも、定款で定めれば可能です。

一見すると、これは相続対策や所得分散に使えそうに見えます。

親が多く出資して、子どもには少しだけ出資させる。
でも、利益は子どもに多く配分する。

こうすれば、子どもに財産を移せるのではないか。
そう考える人もいるかもしれません。

しかし、ここはかなり慎重に考える必要があります。

会社法上できることと、税務上問題がないことは別です。

出資割合と大きく異なる利益配分をすると、税務上は「実質的に贈与があった」と見られる可能性があります。

たとえば、親が90%、子どもが10%出資しているのに、利益は親10%、子ども90%で配分したとします。

この場合、本来なら親に帰属するはずの利益を、子どもに移したと見られる可能性があります。

そうなると、みなし贈与として贈与税の問題が出てくることがあります。

ここは、大家さんが勘違いしやすいポイントです。

「合同会社は自由に利益配分できる」
この言葉だけを見て、安易に相続対策に使おうとするのは危険です。

税務上のリスクまで含めて、税理士に確認しながら設計する必要があります。

株式会社の強みは「株主」と「役員」を分けられること

株式会社の大きなメリットは、株主と役員を分けられることです。

これは、不動産経営を家族に引き継ぐうえで非常に重要です。

株主とは、会社の所有者です。
役員とは、会社を経営する人です。

株式会社では、この2つを分けることができます。

たとえば、子どもに株を持たせるけれど、役員にはしない。
逆に、子どもを役員に入れて仕事を覚えさせるけれど、株はまだ渡さない。

こういう設計ができます。

これは、家族への承継を考えるうえで大きな自由度になります。

特に、子どもがまだ若い場合や、本業をしっかり続けてほしい場合には、いきなり大きな財産や不労所得を渡すことに抵抗がある人も多いと思います。

親としては、将来は不動産経営を引き継がせたい。
でも、今すぐ経営権や財産権を渡すのは早い。

こういうとき、株式会社であれば段階的に設計しやすくなります。

まずは役員として関わらせる。
しばらく経営を学ばせる。
その後、必要に応じて株式を少しずつ移していく。

このような形が取りやすいのです。

公務員の子どもがいる場合も株式会社のほうが設計しやすい

家族の中に公務員がいる場合も注意が必要です。

株を持つだけであれば、一般的には問題になりにくいです。
上場株を持っている公務員はたくさんいます。

しかし、役員になる場合は話が変わります。

役員になると、勤め先の兼業規定に触れる可能性があります。

また、役員は登記簿に名前が載ります。

無給であっても、外から見れば「会社の役員をしている」と分かる状態になります。

この点でも、株式会社は使いやすいです。

株式会社であれば、子どもを株主にするけれど役員にはしない、という形を取りやすいからです。

一方、合同会社の場合、出資者である社員が経営に関わるという仕組みが基本です。

定款で業務執行しない社員を設けることはできますが、株式会社のほうが株主と役員の分離は分かりやすく、実務上も設計しやすいと思います。

相続まで考えるなら、株式会社のほうが選択肢が広い

不動産投資用の法人を作る場合、最終的に避けて通れないのが相続です。

個人で不動産を持っていれば、不動産そのものが相続財産になります。

法人で不動産を持っていれば、法人の株式や持分が相続財産になります。

つまり、法人化したから相続がなくなるわけではありません。

相続する対象が、不動産そのものから、会社の株式や持分に変わるということです。

ここで重要になるのが、誰がどれだけ株を持つかです。

株式会社であれば、普通株だけでなく、種類株式を使った設計もできます。

たとえば、本人が議決権のある普通株を10%持つ。
配偶者が議決権のない株式を90%持つ。

このようにすれば、財産的な権利は配偶者に多く持たせながら、会社の経営判断は本人が握ることができます。

つまり、

財産は家族に移すが、経営権は自分が持つ

という設計が可能になります。

これは、高齢の大家さんにとってかなり大きなメリットです。

将来の相続税対策を考えながらも、物件の売却、借入、修繕、建て替えなどの重要な意思決定は自分で行いたい。
そういうニーズに対応しやすいのが株式会社です。

合同会社でも定款を工夫すれば似たような設計はできますが、一般的には株式会社のほうが分かりやすく、専門家も対応しやすいと思います。

合同会社は死亡時の持分承継にも注意

合同会社で特に見落としがちなのが、社員が亡くなったときの扱いです。

合同会社では、社員が死亡すると、原則として退社扱いになります。

つまり、亡くなった人の地位が、そのまま相続人に自動的に引き継がれるわけではありません。

相続人には出資金の払い戻しを受ける権利が発生しますが、会社の社員としての地位を引き継ぐには、定款でそのように定めておく必要があります。

もし1人だけで合同会社を作っていて、その人が亡くなった場合、定款の設計によっては会社が解散する可能性もあります。

これは、不動産を保有する法人ではかなり重要です。

法人名義で不動産を持っているのに、代表者が亡くなったことで会社運営が止まってしまう。
相続人がスムーズに経営を引き継げない。

こういうことが起きると、相続の場面で大きな混乱になります。

合同会社を選ぶ場合は、設立時の定款で、死亡時の持分承継について必ず確認しておく必要があります。

私ならどう考えるか

私なりに整理すると、合同会社と株式会社は、どちらが絶対に正解という話ではありません。

目的によって向き不向きがあります。

とにかく設立費用を抑えたい。
家族を入れる予定はない。
自分ひとりでシンプルに管理したい。
将来の相続設計はそこまで複雑ではない。

こういう人であれば、合同会社でもよいと思います。

一方で、家族への承継を考えている。
配偶者や子どもに将来関わらせる可能性がある。
株主と役員を分けたい。
議決権を自分に残しながら、財産権は家族に移したい。
相続まで含めて長期で設計したい。

こういう人であれば、株式会社を最初から検討したほうがよいと思います。

特に、不動産を複数所有している大家さんや、これから法人で物件を増やしていく予定がある人は、最初の法人設計がとても重要です。

あとから合同会社を株式会社に組織変更することも制度上は可能です。
しかし、法人名義で不動産を複数持っていると、会社形態の変更に伴って登記関係の手間やコストが発生することがあります。

だからこそ、最初に安易に決めないことです。

設立費用だけを見ると、合同会社は魅力的です。
でも、不動産投資家にとって大事なのは、目先の数万円、十数万円の違いだけではありません。

その法人を使って、どう資産を持ち、どう経営し、どう家族に引き継いでいくか。
ここまで考える必要があります。

まとめ

大家の法人化で大切なのは、会社を作ることそのものではありません。

大切なのは、法人を作ったあとに、その法人をどう使うかです。

合同会社は、設立費用が安く、維持管理もシンプルです。
小さく始めるには使いやすい会社形態です。

一方、株式会社は、設立費用や維持の手間はかかります。
しかし、株主と役員を分けられること、種類株式を使えること、相続や承継の設計がしやすいことは大きなメリットです。

不動産経営は短期勝負ではありません。
特に家族に資産を引き継ぐことまで考えるなら、会社の形は慎重に選ぶべきです。

安いから合同会社。
なんとなく信用がありそうだから株式会社。

こういう決め方ではなく、自分の資産規模、家族構成、年齢、後継者の有無、相続の方針から逆算して決めることが大切です。

法人化は節税対策であると同時に、資産承継の設計でもあります。

不動産を長く持ち、次の世代まできちんと引き継ぐつもりなら、最初の法人設計には時間をかけるべきだと思います。

※実際に法人化を検討する場合は、税理士・司法書士などの専門家に相談し、自分の資産状況や家族構成に合わせて判断することをおすすめします。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



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