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民泊「実質禁止」可能に──自治体の裁量に収益を預ける投資の危うさ

観光庁が、自治体による民泊営業の「実質禁止」を可能にする通知を6月中に発出する予定だと報じられています。

トラブル増加を受けた住宅宿泊事業法(民泊新法)の運用強化で、民泊物件を前提にした収益モデルや、それを扱う仲介・管理のビジネス環境が大きく変わる可能性があります。

「自分は民泊をやっていないから関係ない」

──そう読み飛ばす前に、少しだけお付き合いください。

これは民泊だけの話ではなく、「収益が、自分以外の誰かの裁量に丸ごと委ねられている投資」の危うさという、すべての不動産投資家に効く構造の話だからです。

結論:高い利回りより「誰がそのスイッチを握っているか」を見る

結論から言いますと、民泊物件の判断で最初に見るべきは表面利回りではなく、「その収益のスイッチを、誰が握っているか」です。

今回の通知でもし自治体が「営業日数ゼロ日」に近い条例を設定できるようになれば、民泊用途で取得した物件の収益は、ある日の条例改正で一夜にして崩れます。

これはオーナーの努力や物件の良し悪しとは無関係に、外側のスイッチひとつで起きる。

利回り15%が一夜でゼロになりうる投資を、私たちは「高利回り物件」と呼んでいいのか、という話です。

1. 表面利回りではなく「買った後に回り続けるか」で見る

不動産投資でいちばん危ういのは、「いま回っている数字」を「これからも回る数字」と取り違えることです。

民泊の利回りは、いまの制度・いまの観光需要・いまの自治体の運用という、3つの前提がすべて揃って初めて成立しています。

このうち制度と自治体の運用は、投資家がコントロールできません。

レントロールや収支シミュレーションがどれだけ立派でも、その前提条件が「自治体の一存で消える」なら、それは保証ではなく不確実性そのものを利回りという衣装で着せられている状態です。

数字を見るときは、いつも「なぜその数字が出ているのか」「その前提は自分で守れるのか」を分けて考える必要があります。

2. 「民泊→旅館業」という抜け道も、先回りで塞がれうる

民泊の日数規制が厳しくなる中で、抜け道として「旅館業(簡易宿所)の許可を取って通年営業に切り替える」という転換戦略が一部で広まっています。

ですが、ここにも自治体が有人フロント義務などの上乗せ規制をかける動きがあり、転換ルートそのものが塞がれる可能性があります。

私がこの十数年、毎月のように土地と物件を仕入れてきて思うのは、抜け道を前提にした収益設計は、ほぼ確実に後から規制で詰むということです。

路線価の否認も、相続節税スキームの封じ込めも、結局は同じ筋でやってきました。

制度の「穴」で成り立つ利益は、制度を作る側が穴を塞いだ瞬間に消えます。

不動産は本来、抜け道で稼ぐ道具ではなく、収益を生んで長く持ち続ける生産資産です。

出口を「次の抜け道」に頼る設計は、その時点ですでに脆い。

3. 規制は「禁止」より「踏み絵」として効く

今回の通知を、私は単純な「民泊潰し」とは見ていません。

規制というのは、全面禁止よりも「やるなら相応の覚悟と体制を持て」という心理的な踏み絵として効くものです。

トラブルを起こさず、近隣と地域に説明責任を果たせる事業者だけが残り、片手間・抜け道組がふるい落とされる。

長い目で見れば、まじめにやっている人にとっては悪い話ばかりではありません。

ただし投資家として大事なのは、その踏み絵を踏める体制(管理・運営・地域対応)を自分が本当に持てるのか、を冷静に見積もることです。

持てないなら、その物件は「高利回り」ではなく「自分には回せない物件」です。

4. では、何で回す物件を選ぶか──「実需で回るか」

ここがいちばんお伝えしたい点です。

民泊が観光需要と制度に依存するのに対して、ふつうの賃貸住宅は「そこに住みたい人がいる」という実需で回ります。

実需は、自治体の条例ひとつで一夜に消えたりしません。景気にも比較的左右されにくく、出口(売却)でも次の買い手が評価しやすい。

私が物件を見るとき、相場の高い・安いより先に確認するのは「実需で回り続けるか」「出口でちゃんと流動性があるか」です。

収益のスイッチを自分の手元に近づけておく、と言い換えてもいい。

今回の民泊規制は、「制度依存の収益」と「実需の収益」のちがいを、これ以上ないほど分かりやすく見せてくれた事例だと思います。

まとめ:いま民泊物件を検討している方へ

  • 表面利回りより先に「その収益のスイッチを誰が握っているか」を確認する。
  • 「民泊→旅館業」など抜け道前提の出口設計は、規制で詰むリスクを必ず織り込む。
  • 融資返済計画は、最悪「営業日数ゼロ」になっても耐えられるか(耐えられる額の借入か)で逆算する。
  • 収益が「実需」で回るのか、「制度の許可」で回るのかを切り分けて評価する。

不動産投資の勝負は、勇気や利回りの高さではなく、『設計と耐久力』です。

そして設計の第一歩は、『収益のスイッチを、できるだけ自分の手元に置く』こと。これを合言葉にしてみてください。

もし「この民泊物件、業態転換も含めてどう見ればいいか」「実需で回る組み替えはできないか」と迷う案件があれば、ぜひ一度お声がけください。

一見むずかしそうな物件でも、相場の高い・安いより「建てて回るか・実需で回るか」で一緒に見ていきます。

なお本稿はあくまで私見であり、最終的な投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



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