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35年では届かない家を、どう買う?増えてきた“50年ローン”をわかりやすく整理してみた

35年では家が買えない時代へ──「50年住宅ローン」の本質と、私が見ている“真のリスク”

最近、お客様や経営者仲間から
「50年ローンって実際どうなんですか?」
と聞かれることが増えてきました。

正直、5年前までは“都市伝説みたいなローン”でしたが、
いまは地方銀行・ネット銀行を中心に 普通に選択肢になりつつある のを、現場で感じています。

背景は単純で、

  • 都心の住宅価格が上がりすぎた

  • 共働きでも35年では月々が重い

  • それでも「家は今のうちに買いたい」

というニーズが噴き出しているからです。

私自身、不動産事業をやっている立場として、50年ローンは「使い方さえ間違えなければ戦略になる」と考えています。

ただし、これは“誰でも救ってくれる魔法”ではないと考えます。

むしろ、誤った理解で借りると老後どころかキャリアまで壊れます。

今日は、数字と現場の感覚の両面から、50年ローンの本質 を整理しておきます。


■ 50年ローンはなぜ急増しているのか?

住宅金融支援機構の最新データでは、「40〜50年ローン」利用者は 7.1%(2025年4月時点)

この数字、業界にいる私から見るとかなり大きいです。

住宅ローンの世界では“1%の動き”でも市場を揺らすので、7%は「完全にトレンド化している」と言えます。

とくに20〜30代の若い世帯が積極的です。

理由は簡単

  • 月々の負担を約20%下げられる

  • 今のうちに資産価値のある物件を確保したい

  • インフレ・地価上昇を見越して“早く押さえるメリット”を感じている

私自身、都内で物件を買ってきた経験からも思いますが、“買いたい時に買えない”ことが一番リスクになる時代です。


■ 50年ローンのメリット(重視するポイント)

◎ 月々の返済が5〜6万円軽くなるインパクトは大きい

例:8,000万円・1.5%の場合

  • 35年 → 24.5万円

  • 50年 → 19万円

5.5万円の差は、家計の余白という意味で劇的です。

若い世帯の場合、この“余白”で未来の選択肢が決まると言っても過言ではありません。


◎ 都心の資産価値の高い物件に手が届きやすくなる

私がよく話すことですが、都心物件は時間が経つほど手が届かなくなる

50年ローンは、この“時間差のリスク”を消すツールになります。

駅近・都心・人気エリアの物件は、10年後買える保証はゼロに近い気がします。


◎ 長期固定なら“金利という最大のリスク”を潰せる

これは投資家の視点でも重要。

固定で50年押さえたら、インフレが来ても金利上昇が来ても関係ありません。

ローンは“借金”ではなく、“資産防衛ツール”になります。


■ デメリット(ここを理解してないと危険)

× 総返済額は1,100万円以上増える

数字は残酷です。

  • 35年 → 1億288万円

  • 50年 → 1億1376万円

差:+1,088万円

これは「余白の対価」だと理解しておくべきです。


× 老後まで返済が続く(30歳で借りても完済80歳)

僕の周りの経営者は“70歳以降も働く”ことを想定していますが、会社員の場合、定年後のキャッシュフローが厳しくなります。


× 住み替えが非常に難しくなる

例の通り、30年経っても残債が4,000万円近く残る。

  • 売却価格 < 残債

になれば、住み替えは不可能です。

これは実務上、かなり大きいデメリットです。


× 親子リレーは「家族の人生設計」を縛る

私の立場では、親子リレーは正直おすすめしません。

  • 子のキャリア

  • 結婚

  • 資産形成

  • 相続のタイミング

すべてに影響します。


■ 50年ローンに向いている人(私の結論)

◎ 向いているのはこんな人

  • 若くて収入が伸びる見込みがある

  • 共働きで安定している

  • “確実に”繰上返済できる

  • インフレ・地価上昇を織り込んで行動できる

  • 自営業・士業など長く働ける職業

こういう人にとっては、50年ローン = レバレッジの効いた資産戦略になります。


× 向いていないのは…

  • 月々だけ下げたい“延命的な借入”

  • 住み替えの可能性が高い

  • 老後資金に不安がある

  • 繰上返済の計画がない

こういう方は、逆に家計が破綻します。


■ 最後に(私が一番伝えたいこと)

50年ローンは「長く借りる」ことが目的ではありません。

“余白を作って、戦略的に資産を積み上げるための道具”です。

私が考える本質はここです。

  • いま都心の物件を押さえるべきか

  • いつ・どれだけ繰上返済するか

  • 老後も働ける設計か

  • 子供の独立や住み替えの計画はどうか

これらとセットで考えれば、50年ローンは強力な味方になります。

逆に、月々の支払だけを見て決断すると、未来の自由が奪われます。

金融機関の提案をそのまま受ける時代は終わりました。

“自分の人生戦略に合うかどうか”がすべてです。

状況に合わせて、最適なローン戦略・繰上返済プランや不動産の選び方もアドバイスできますので、気軽に相談してください。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



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