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マンション理事が10年で横領1億円!? 区分オーナーが守るべきものとは

マンションの管理費って、まさか盗まれることあるの?残念ながら、答えはYESです。しかも金額は数千万円単位。

実際に起きた“本当にあった怖い話”をもとに、投資家視点での注意点と対策を解説します。


INDEX

  1. 管理費・修繕積立金が狙われる理由

  2. 実録①:管理会社社員が14組合から9億円着服

  3. 実録②:自主管理マンションで理事が10年間着服

  4. なぜ防げなかったのか?構造的なリスク

  5. 着服を防ぐ2つの具体策

  6. 投資家としてできる「見張り力」


1. 管理費・修繕積立金が狙われる理由

マンション経営の裏側には、「組合費」という巨大なお金の流れがあります。
具体的には、管理費・修繕積立金。毎月、組合員(所有者)から集められるこれらの資金は、共用部の維持・将来の修繕のために積み立てられていきます。

ところが――
管理が甘いと、その「組合のお金」に魔の手が伸びてくるのです。


2. 実録①:管理会社社員が14組合から9億円着服

2025年1月、大阪で東証スタンダード上場の大手ビルメンテ会社の社員(60代)が逮捕されました。
担当していた14の管理組合から合計9億1474万円を横領。

  • 通帳と印鑑を同時に預かっていたため、不正に現金を引き出し可能な状態に

  • 銀行の払戻請求書を偽造して現金を引き出し

  • 残高証明や決算書を偽造して「帳尻合わせ」

驚くべきは、この人物が現場では「優秀」と評価されていたこと。つまり、外から見ただけでは分からないのです。


3. 実録②:理事が10年間で1億円着服した自主管理マンション

東京都世田谷区のある分譲マンション(39戸)では、1998年から10年にわたり、会計担当理事が管理費を着服
合計1億1528万円。用途はなんと、生活費・借金返済・自分の会社の運転資金まで。

  • 通帳・印鑑・キャッシュカードを1人で管理

  • 約200回にわたって不正出金

  • 会計報告・預金証明書まで偽造

このマンションは自主管理型だったため、管理会社の「二重チェック」がなく、発覚までに10年かかったのです。


4. なぜ防げなかった?構造的リスクの正体

共通点は2つ:

  • 権限が1人に集中:通帳も印鑑もカードも同一人物が所持

  • チェック体制の不在:監査も総会も形骸化し、住民の関心が低かった

特に自主管理の物件では、「なり手がいないからずっと同じ人が理事」というケースも珍しくありません。それが油断と不正の温床になります。


5. 着服を防ぐ2つの具体策

❶ 通帳と印鑑の分別管理

  • 通帳は会計理事、印鑑は理事長、というように「役割分担」

  • 暗証番号やネットバンキングも個人が握らず「共有権限制」に

第三者チェック体制

  • 会計監査だけでも専門のコンサルタント会社に委託

  • 定期的に「預金残高証明の突き合わせ」と「実地監査」

  • 外部の目があるだけで、不正の抑止力になる


6. 投資家としてできる「見張り力」

区分オーナーにとって、管理組合の運営=資産の安定性に直結します。

  • 総会の議事録は確認していますか?

  • 会計報告は読んでいますか?

  • 管理会社・理事の「ワンマン状態」になっていませんか?

他人任せにせず、“参加しないオーナー”が最大のリスクという意識を持つことが、長期的な資産保全につながります。


👇まとめ:こんな兆候には要注意!

兆候 リスク度 備考
通帳と印鑑が1人管理 ★★★★★ 不正が即実行できる状態
総会の出席率が低い ★★★★☆ 監視の目がないと不正は長期化
同じ人が理事を10年 ★★★★☆ モラルが崩れやすい
会計報告が毎年ざっくり ★★★☆☆ 曖昧な決算は危険信号

最後に:資産を守るのは、あなた自身

マンション経営は「建物と人間の組織」で成り立っています。

表面上の利回りだけでなく、「管理組合の健全性」にも目を向けることが大切です。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



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