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「ローン特約が使えない!?」買主が白紙解除できなかった裁判例の真実

【要注意】ローン特約が使えない⁉ 資金条件変更で契約が白紙に戻らない“落とし穴”とは?

連帯保証人・金利・担保の有無で運命が変わる?弁護士が実例解説をしていたので分かりやすくまとめました。


INDEX

  1. ローン特約とは?その基本と「過信リスク」

  2. なぜ使えない?「契約解除できなかった」実例

  3. 連帯保証人や金利でもNGになる?過去判例から学ぶ

  4. 投資家・買主が陥りやすい“思い込み”

  5. 契約前に押さえるべき3つの視点

  6. 売主・仲介ができる「防衛策」とは?


1. ローン特約とは?その基本と「過信リスク」

「ローン特約」とは、融資が通らなければ売買契約を“白紙解約”できる条項になります。

買主保護のための便利な仕組みではありますが、実際の裁判例では「適用されないケース」も数多く存在しています。

特に、以下のようなケースでは解除が認められなかったことがあるのです。

  • 担保設定の有無が事前相談と違った

  • 連帯保証人を用意できなかった

  • 金利条件を勝手に変更した

  • 本申込で不要な諸費用を上乗せした


2. なぜ使えない?「契約解除できなかった」実例

<実例>東京地裁 H26年4月18日判決

  • 事前相談では共同担保ありでOK

  • だが本申込では担保を出さずに申請 → 否認

  • 裁判所は「ローン特約の適用外」と判断し、買主の解除請求を退けました

このように、「事前審査と異なる条件」で申込んでしまったことが致命的だったのです。


3. 連帯保証人や金利でもNGになる?過去判例から学ぶ

  • Case1:申込金額の増額はOK
     → 合理的な内容なら特約適用(H28年東京地裁)

  • Case2:連帯保証人が不在 → NG
     → 買主の責任あり(H10・H16東京地裁)事前相談では連帯保証人を用意することを条件提示されていたようです。

  • Case3:金利タイプの選択
     → 固定を選んでも合理的なら問題なし(H9大阪地裁)

条件の「変更幅」「合理性」「事前説明との一致度」が、裁判所判断の分かれ道となるのです。


4. 投資家・買主が陥りやすい“思い込み”

  • 「どうせ通らないならローン特約で白紙に戻せる」

  • 「本申込では少しぐらい条件を変えてもOK」

  • 「事前相談なんて口頭だったし、証拠はない」

こうした安易な行動はトラブルの元!

特に投資家が複数物件を同時に仕込む際、他物件の融資状況・担保影響を甘く見ると地雷を踏むことも・・・。


5. 契約前に押さえるべき3つの視点

チェック項目 内容 推奨対応
条件の一致 事前相談と本申込で“完全一致”を意識 書面化・証拠保管
帰責事由の排除 虚偽申告・怠慢申請の防止 ローン申込履歴を明示
条項の確認 契約書の文言を再確認 「〇〇銀行限定」などに注意

6. 売主・仲介ができる「防衛策」とは?

  • ローン特約の文言を明確化

  • 「金融機関・金額・申込期日」を具体記載

  • 買主のローン不成立理由を可能な限り確認

  • 解除時の手付金処理を契約書に明記

特に、「売主側から見ると買主が勝手にローン落ちたと言ってるだけ」に見える構造は強く意識すべきです。


まとめ:ローン特約は“魔法のカード”ではない

条件を変えれば、特約は効かない。

不動産売買の実務では、「ローン特約があるから大丈夫」という楽観が後悔につながることも少なくありません。

契約前に「書面」「条件」「証拠」をそろえたうえで、最悪のシナリオまで見越した取引設計が、今後ますます重要になるでしょう。

そして、売買契約をする際は基本仲介業者に任せることがほとんどなので、業者選定も大事になってきます。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



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