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倒産2000件時代へ突入?建設業界で今、おきていること

2025年、建設業界はかつてない厳しさに直面しています。帝国データバンクが公表した最新データによれば、2025年上半期(1〜6月)の建設業倒産件数は986件。前年同期の917件を上回り、4年連続の増加となっているようです。

特に注目すべきは、この数字が年間2000件ペースであるという点です。

これは、リーマン・ショック後の混乱期を除けば、実に12年ぶりの高水準で、多くの建設業者が資金繰りの悪化に苦しみ、経営破綻に追い込まれている現実が浮き彫りになっています。


コロナ後の“反動地獄”──物価高騰と人材難が引き金に

建設業界が直面する最大の壁は、資材価格の高騰と職人不足のようです。

  • 鉄骨や木材、住設機器などは、コロナ禍以降に「ウッドショック」「建材バブル」などと呼ばれる価格上昇を経験し、その多くが現在も高止まりしたまま。

  • 一方で、若年層の建設業離れと、熟練職人の引退により、深刻な人手不足も続いています。

資材と人件費の両方が上昇しながら、販売価格にそのコストを十分に転嫁できない中小企業にとって、これは“挟み撃ち”のような状況です。


注目倒産事例:「さつまホーム」の崩壊が示すもの

大阪府の注文住宅会社「さつまホーム」は、長年にわたって**天然素材の「無添加住宅」を主力商品として展開してきました。

もともとは1996年、代表の父が始めた事業の建設部門を法人化した会社で、北摂地域の若年層を中心に人気を集めていた企業でした。

同社は「住んで喜ばれる家づくり」を理念に掲げ、化学物質を極力使わない住宅を追求。2010年代には岐阜や鹿児島にも営業所を開設し、年商19億円規模の企業へと成長していました。

しかしその後──

  • コロナ禍での受注減少

  • 購入予定の土地売買契約延期で資金繰り悪化

  • 外注費・資材費の高騰による赤字拡大

  • 関連会社の大口契約が土壇場で失注

これらが連鎖的に起こり、最終的には2025年2月、大阪地裁へ自己破産を申し立てるに至りました。


倒産要因は「受注不振」+α

背景にある“構造的な弱さ”

帝国データバンクの統計によれば、建設業倒産の主な要因は「受注不振」です。しかし、その背景にはより複雑な構造的問題が横たわっています。

物価高倒産が1割超

2025年上半期の倒産986件のうち、118件(12.0%)は物価高によるもの

急激に高騰した建材費を契約価格に反映できず、コストと利益のバランスが崩壊。自転車操業を強いられていた中小業者が次々と力尽きています。

人手不足と後継者難が深刻

さらに、人材確保の困難さが、企業体力を奪っています。

  • 人手不足が要因の倒産:54件(5.5%)

  • 後継者難による倒産:69件(7.0%)

高齢化により熟練職人が引退する一方で、若手の職人志望者は激減。現場の“担い手”がいないまま、外注依存が進み、コストは膨らみ、利益率はさらに悪化するという悪循環に陥っています。


今後さらに倒産が加速する可能性も

2025年後半にかけても、倒産の増加は続く見通しです。

  • 資材価格は依然として高止まり

  • 現場を支える職人たちの大量引退期が本格化

  • 働き方改革による時間外労働の上限規制も影響

中小建設業者にとっては、資金繰りと人手確保の両面で“体力勝負”の時代が続くでしょうね。

とくに施工能力を内製化できていない企業や、営業力・ブランディングが弱い企業は淘汰のスピードが加速しそうです。


生き残るための選択肢とは?

建設業者、とりわけ中小企業がこの苦境を乗り越えるためには、単なるコストカットやリストラでは不十分かもしれません。

  • 価格転嫁戦略の再設計(高付加価値型への転換)

  • 若手職人の採用と育成に投資

  • 地域密着・紹介中心の営業強化

  • 金融機関との連携強化や補助金活用による資金調達の多様化

そして何より、「縮小均衡」ではなく「変化に踏み込む覚悟」が求められます。


まとめ

建設業界における倒産増加は、単なる景気やコストの問題ではなく、構造的な経営課題の噴出です。

2025年、淘汰の波に飲まれるか、変化のチャンスに変えるか──中小建設業者にとって、今が正念場です。

そして私がいる不動産業界もかなりリンクしてくるので、今後も危機感を持ちながら経営していくしかないですね。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



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