ビジネスと不動産経済を本気で考えるブログ

不動産クラウドファンディングで今話題になっていること

不動産クラウドファンディングはご存知でしょうか。

1口数万円から「不動産投資」を始められる気軽さに加え、10%以上の高利回りを謳う商品もあることなどから、支持が広がっています。

この制度によって実際高額な物件を買わなくても、少額の投資で不動産投資を味わえて、しかもリターンもある投資先の一つでもあります。

先日、ある不動産クラウドファンディングが償還日の前日に突如、数カ月の「延期」を発表したことが、SNSなどで物議を醸している。

その会社は高利回りのファンドが多いことで知られる「ヤマワケエステート」の商品の一部で、サッカー元日本代表の本田圭佑氏がオフィシャルアンバサダーを務めるなど、広告も積極的に展開しています。

不動産クラウドファンディングを簡単におさらい

不動産クラファンは、個人投資家から集めた資金で事業者が物件を購入し、一定期間運用し賃貸収入や売却などで得られた収益を投資家に分配する仕組みのことです。

運用期間は数カ月から数年程度が一般的で、運用が終了すると投資の元本と運用益が投資家に返金(償還)されます。

償還が延期となることはさほど珍しくはないようですが、今回は延期発表のタイミングが償還予定日の前日であったことから、投資家の間で話題となっています。

償還が延期されたファンドとは?

今回償還の延期が公表されたのは、「札幌市宮の森 隈研吾&Knight Frank社」シリーズというファンドです。

同ファンドが投資対象としているのは、建築家の隈研吾氏が設計を担当した集合住宅「プロスタイル札幌宮の森」のようです。

調べたところ山沿いの斜面に低層の全20戸が配置されたデザイナーズ物件で、竣工は2022年8月、間取りは1LDK+Sから3LDKの高級レジデンスみたいです。

かなりイケていますね。

ヤマワケエステートでは、同物件全20戸のうち13戸を取得し、4回のシリーズのファンド(1st~4th)に分けて募集を実施。全シリーズ総額23億900万円を募り、想定利回りは13~18.4%を掲げていました。

想定利回りが13~18.4%というのはかなり高い利回りになりますね。

4つのシリーズのうち「1st」については、2025年の1月31日に償還を迎えていて、今回償還日が延期となったのは、2nd~4thのファンドになります。

オフィシャルでは3月7日付で「運用終了後の償還延期に関するご説明」が発表され、2nd~4thの償還期限が延長されることが明らかになりました。

今回話題になっているのは、実際の投資家に伝えられたのが償還予定日の前日である2025年2月27日であったことです。

同シリーズはいずれもすでに運用期間自体は終了していて、償還期日を延期することになった理由について、ヤマワケエステートは「本件取引において想定し得なかった事態が発⽣し、換価処分が完了しなかったため」と説明しています。

簡単に言うと、“売却ができなかった”ということです。

また、償還予定日の前日に延期を通知する事態になった理由については、ぎりぎりまで購入予定者と決済の準備を進めていたみたいですが、うまくまとまらなかったようです。

そして、『包括的に販売していく⽅向へ運⽤計画を変更することとなりました。』となっているので、別のファンドか何かにまとめて売却していく方針に変えたようです。

今回の延期によって設定された新たな償還期日は、2025年8月29日です。残り5カ月強でこれらすべての物件について、売却等が行われることになります

難易度が高いとは思いますが、引き続き注視していきたいと思います。

償還期日が伸びること

不動産クラファンをやる人は理解していた方が良いと思われるのは、物件が売れなければ償還期日が伸びる可能性は常にあるということです。

ヤマワケエステートさんを擁護するわけではないのですが、不動産取引では直前に契約がひっくり返ることは実際あるので、ぎりぎりまで買主候補との交渉を行い、投資家に伝えたのが償還日前日になってしまったのではないかと思われます。

また、売買交渉が難航している時点でリリースを出しても不安を煽るだけで、ある程度内容が固まるまで投資家へ連絡できなかったのではないかとも予想されます。

ただ、サッカー元日本代表の本田圭佑氏がオフィシャルアンバサダーをしていて、最近では大々的に広告を打ち出している会社が償還期日を延長するとは投資家も思っていなかったため、SNS等で話題になったのではないかと思います。

不動産クラウドファンディングのリスクとは?

 

不動産クラウドファンディングには元本保証がありません。

そして元本割れするリスクを考える上で、カギになるのが「優先劣後出資方式」の仕組みになります。

これは、ファンドの運営で損失が出た場合でも、「一定の割合までは事業者側がその損失を負担する」というもので、これにより、出資者の元本割れの危険性が低減されることになります。

ただ、優先劣後の仕組みには、法律上の明確な規定がありません。

劣後出資の割合について下限が定められておらず、各事業者がファンドごとに任意に設定しているのが現状です。

ヤマワケエステートの場合、たとえば「札幌市宮の森 2nd」の契約成立前交付書面を見ると、「本契約は優先劣後構造となっており、事業参加者は優先出資を行い、本事業者が 0.1712%以上の劣後出資を行います」との記載があります。

「2nd」の募集金額(優先出資分)は5億5500万円。もし劣後出資割合が0.1712%だった場合、劣後出資分の金額は約95万円になります。

つまり運用や売却で95万円以上の毀損があった場合は、優先出資者である投資家の元本に影響が出てくるということです。

この商品は劣後出資比率が低い分、利回りは15.9%と他社のファンドに比べても非常に高くなっています。

高いリターンが得られる可能性がある代わりに、ハイリスクなファンドであるということを理解して投資する必要があります。

 

ハイリスクハイリターン型ファンドの一例

<ヤマワケエステート>

札幌市宮の森 2nd 隈研吾&Knight Frank社/利回り15.9%/劣後出資0.1712%

<Victory Fund>

第33号 宇都宮市プロジェクト/利回り12.0%/劣後出資1.0989%

<SHIODOME funding>

汐留ファンディング15号(川崎市麻生区1棟マンションプロジェクト)/利回り10%/劣後出資11%

■ローリスクローリターン型ファンドの一例

<Rimple>

Rimple’s Selection #98/利回り2.7%/劣後出資30%

<えんfunding>

えんfunding 第40号ファンド【博多Belle】/利回り2.9%/劣後出資20%

<ちょこっと不動産>

ちょこっと不動産39号 豊島区高松Ⅰ/利回り4.05%/劣後出資37%

まとめ

不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業法に基づいて行われます。

この法律はもともと、出資を募って不動産を売買・賃貸し収益を分配する事業の適正な運営や投資家の保護などを目的に1994年に制定されましたが、インターネットを活用したクラウドファンディングに対応するため2017年に改正されています。

これにより、制度を利用した不動産クラファンは近年急増しています。国交省によると、2023年の実績ベースで新規に530件、出資額は1000億円を超えるそうです。

不動産クラウドファンディングは不動産投資や株式投資と同様に潜在的なリスクがあることを前提に投資する必要があることを知っていてください。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



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