マンションの大規模修繕で、発注者を支えるはずの専門家と工事会社が結託する。
楽待新聞の「マンション修繕の『談合』はなぜ起きたか、管理組合狙い『結託』した業者に公取委がメス」(牧野知弘氏、2026年9月5日公開)を読みました。
もちろん、不正を行う業者に問題があることは言うまでもありません。
ただ、この記事で私が特に気になったのは、住民が自分たちのマンションの管理に関心を持たなくなってしまうことです。
毎月、修繕積立金を払っている。そのお金で、自分たちの建物を維持していく。
それなのに、何に使われ、誰が決めているのかが、自分から遠い話になってしまう。
私は、この距離感について考えさせられました。
専門家に頼んでも、不正を見抜けるとは限らない
元記事では、関東地方のマンション大規模修繕をめぐり、公正取引委員会が設計コンサル会社と工事会社に排除措置命令を出し、工事会社に総額16億円の課徴金納付を命じる方針だと伝えています。これは、同記事の公開時点で報じられた処分方針です。
記事で紹介されているのは、受注する会社をあらかじめ決め、ほかの会社が高い見積もりを出すことで、その会社が選ばれるようにする構図です。
発注する側から見れば、専門家に相談し、複数の見積もりも取っています。
それでも、その比較自体が仕組まれていたら、普通の住民が見抜くのは相当難しいでしょう。
私は、「もっと勉強していれば防げた」と簡単には言えないと思います。
建築の知識があることと、会社同士の裏側の関係が分かることは別です。見積書を丁寧に読んだからといって、すべての不正が見えるわけではありません。
それでも、無関心でよいとは思わない
不正を見抜くのは難しい。
だからこそ専門家に頼るわけですが、そこで自分たちの関心まで手放してしまってよいのか。私は、そこは考える必要があると思います。
管理組合の仕事は、時間も手間もかかります。仕事や家庭がある中で、積極的に引き受けたいと思えない事情もあるでしょう。
ただ、誰も関わりたがらなければ、引き受けた一部の人に判断も負担も集中します。
周囲が経緯を知らないままでは、その判断が適切かを確かめることも、担当する人を支えることも難しくなります。
住民の関心は、不正を疑うためだけでなく、管理を担う人を一人にしないためにも必要なのだと思います。

不正の責任を住民に負わせたいわけではありません。
そのうえで、自分たちの資産をどう維持していくかという判断には、住民自身も関わり続ける必要があると感じます。
当社は、20年以上付き合いのある工務店に依頼している
この話を、自分の仕事に置き換えて考えてみました。
当社では、工事は20年以上付き合いのある工務店にのみ依頼しています。
したがって、毎回新しい会社を集めて、見積もりの安さだけで発注先を決めているわけではありません。
長く仕事をしていれば、完成した建物だけでなく、そこに至るまでのやり取りも積み重なります。その蓄積があることは、新しい会社に依頼する場合との大きな違いです。
もちろん、付き合いが長ければ何でも安心だと言い切れるものではありません。
それでも、初めて会う会社を資料だけで判断することと、長年のやり取りを踏まえて判断することでは、持っている情報が違います。
私にとって、発注先を考えるうえでは、この関係の積み重ねが大きいのです。
新しく発注するなら、一番気になるのは連絡の速さ
では、新しい工務店に発注するとしたら、何を気にするのか。
私が一番気になるのは、連絡の速さです。
工事の価格や技術はもちろん大切です。ただ、実際に一緒に仕事を進めることを考えると、連絡がきちんと返ってくるかは気になります。
土地を仕入れ、設計し、建物をつくって販売する仕事では、一つの確認が次の判断につながります。
返事がないと、こちらも判断できません。確認中なのか、対応が難しいのか、それすら分からない状態では、次の動き方を決められなくなります。
私が連絡の速さを重視する理由を整理すると、単に早く答えが欲しいということ以上に、今どういう状況なのかを共有できる相手かどうかが気になるのだと思います。
すぐに結論が出せなくても、確認していることや返答の見通しが分かれば、こちらも予定を考えられます。

もちろん、返信が速いから不正をしないと判断できるわけではありません。
それでも、日々の仕事を一緒に進められるかを考えるうえで、連絡の仕方は私にとって大切な判断材料です。
住民全員が専門家になる必要はない
マンションの話に戻ると、住民全員が工事の専門家になる必要はないと思います。
それよりも、分からないことを分からないままにしないことから始めるのが現実的ではないでしょうか。
例えば、次のようなことです。
- 今回は、どこを直す工事なのか。
- なぜ、この時期に行う必要があるのか。
- なぜ、その会社に依頼することになったのか。
- 当初の説明から費用が増えたなら、その理由は何か。

こうした説明に目を通し、疑問があれば質問する。
毎回の会議に参加するのが難しくても、資料を読んで経緯を知っておく。それだけでも、判断をすべて一部の人に預ける状態とは違ってきます。
ただし、質問する側にも、回答には調査や時間が必要な場合があるという理解は必要です。返答が遅いという理由だけで、不正を疑うのも違います。
大切なのは、質問ができて、説明が返ってきて、その経緯を共有できることです。
会社との信頼関係も、住民同士の協力も、こうしたやり取りの積み重ねで成り立つのだと思います。
現時点の結論
今回の記事を読んで、私は「どうすれば談合を完全に見抜けるか」という問いに、簡単な答えはないと感じました。
専門家や複数の会社が結託していれば、発注する側が見抜くのは現実には難しいでしょう。
当社の場合は、20年以上付き合いのある工務店との関係を土台にしています。新しく発注するなら、連絡の速さを特に気にします。
それは、相手のすべてを見抜けるからではありません。一緒に仕事を進めるうえで、状況を共有し、やり取りを続けられることを大切にしたいからです。
マンションの管理でも、専門家に任せながら、自分たちのお金と建物に関心を持ち続けることはできます。
すべてを見抜けなくても、関心を持ち、説明を聞き、分からないことを問いかける。
自分たちの資産を守るために、まず大切にしたいのは、その姿勢だと思います。




