ビジネスと不動産経済を本気で考えるブログ

東京マンションはもう“安全資産”ではない──空室率70%が示す崩れ始めた神話

「東京の不動産は一生下がらない」
そんな神話が語られる一方で、東京都心のマンション市場では異様な光景が広がっているようです。

──千代田区の新築マンション、空室率70%。

購入者の多くは“住まない”
価格上昇によるキャピタルゲインを狙った投機マネーが流入し、実需の購買力と完全に乖離した市場が形成されています。

これは単なる価格高騰ではなく、投機と実需のパラドックス

この歪みが今後、東京の不動産に何をもたらすのかを整理していきます。


■ 投機マネーが生んだ「見せかけの相場」

東京都心の一部で起きているのは、価格上昇を前提とした“転売前提の購入”。

住む意図を持たない所有者が多数派に変わりつつあります。

● 高価格 × 高空室率 = コミュニティの空洞化

・価格は史上最高
・利回りは1.88%前後(国債以下)
・居住率が低く、夜間人口が極端に少ない

昼は賑わい、夜は人が消える。

商店街、学校、地域コミュニティにとって維持できない構図です。

● “値段だけ上がり続ける” 不健全な市場

賃料は追いつかないため利回り改善は望めず、「価格が上がるから買う」以外の根拠がありません。

期待が剥がれ落ちた瞬間、価格は調整へ向かいます。


■ 規制は市場にどう作用するのか?

自治体・国はすでに手を打ち始めています。

📌 千代田区:引き渡しから5年間の転売禁止
📌 東京都:実居住調査・投機監視の強化
📌 他自治体:子育て支援施設設置・バリアフリー義務付け
📌 神戸市:タワマンの課税強化を検討

これらの共通点は明確です。

「不動産を金融商品ではなく、居住の場へ戻す」

短期転売モデルの収益性は削がれ、投機マネーの循環スピードが落ちます。

市場原理で言えば、上昇の勢いが鈍れば、調整の可能性が高まる ということですね。


■ これからの東京は「一括りでは語れない」

今後の不動産市場は、エリアごとの差が極端になります。

項目 勝ち残るエリア 価値が下がりやすいエリア
人口動態 増加 or 高密度 減少・過疎化
雇用 都市圏・再開発 産業弱体化
需要 厚い(実需多数) 薄い(実需減少)
流動性 高い 低い

「東京だから大丈夫」

そんな時代ではなくなっていきます。


■ 新築 VS 中古の分化が始まる

種類 今後の傾向
新築 土地・建材・人件費の高騰が構造化 → 価格は下がりにくい/買い手は富裕層・海外投資家に限定
中古 市場価格の反映が早い/金利や景気の変化を敏感に反映

今後、投資家・購入者の最大のテーマは

価格ではなく「流動性が続く物件かどうか」

に変わっていきます。


■ 10年後も売れる物件の見極め方

勝ち残る物件は、以下の4大要素の掛け算で決まります。

🔹 1. 立地

・駅距離
・治安
・教育環境
・再開発
・生活利便性の “体感価値”

🔹 2. 築年数

築古はNGではなく、
「築年数 × 修繕履歴」の組み合わせが重要。

🔹 3. ブランド

同じ立地でもブランド力は流動性に直結。
売却スピード・賃貸付けの差が顕著。

🔹 4. 管理水準

修繕積立金・管理組合の運営の良し悪しは、
将来の資産価値を左右する決定的要因。

➡︎ バルク購入するプロ投資家ほど “管理” を最重視するのはこのため。


■ 結論:市場を見るより「物件の未来」を見る時代へ

今のマンション相場はオークションのようなもの。

入札額(価格)は上がっているが、
住む満足度や利回りの実力が伴っていない物件が増えている。

だからこそ、

「10年後・20年後に売れる/貸せる物件か?」

という視点が、最大の防御になります。


■ まとめ(超要点)

✔ 東京の空室率70%は投機マネーによる歪み
✔ 規制強化で短期転売は利益が出にくくなる
✔ 市場は今後「エリア別 × 物件別」で二極化
✔ 新築か中古かではなく“流動性が続く物件”を選ぶ
✔ 立地・築年数・ブランド・管理水準の総合評価が鍵

不動産は「相場の勢いで買う」時代から、“流動性の視点で選ぶ” 人だけが勝ち残る時代へ移行していくと考えます。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



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