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ニデック不正会計疑惑に見る“数字経営”の限界──経営者が本当に守るべきものとは

ニデック不正会計疑惑から学ぶ、“数字に追われる経営”の限界

最近のニュースで大きく報じられた、ニデック(旧日本電産)の不正会計疑惑。

正直、私も経営者としてかなり衝撃を受けました。

売上2兆6,000億円を超える世界企業で、しかも日本を代表する上場企業が、監査法人から「意見不表明」を突きつけられた。

これは、単なる一企業の問題ではなく、「経営とは何か」を問う出来事だと思っています。


「過去最高更新」が生んだプレッシャー

ニデックといえば、長年にわたり「過去最高の売上・利益」を更新し続けてきた超優良企業。

ただ、その裏には数字への異常な執着があったようです。

創業者・永守さんはカリスマ経営者として有名ですが、

「過去最高は当たり前」という社風が根付き、社員や役員が“ビクビク”しながら数字を合わせていたという話も出ています。

この「上からのプレッシャー」が、結果として恣意的な会計処理につながったのではないかと指摘されています。

私も会社を経営していて痛感しますが、数字に追われる経営は、最初はスピード感を生むけれど、いずれ組織を壊してしまうのかもしれません。


監査法人PWC JAPANの決断 ― プロの矜持

今回、監査法人PWC JAPANは、ニデックの海外取引(イタリア・中国・スイスなど)に関する資料が開示されない中、

「決算の正当性を確認できない」として意見不表明を出しました。

これは、監査報酬(年間10億円規模)を失う覚悟で、クライアントに忖度せず株主のために判断したプロの決断です。

この行動に、私は正直、尊敬の念を感じました。

会計士が「正しいものを正しいと言う」姿勢を貫くこと。

これがどれほど勇気のいることか、経営者なら痛いほど分かるはずです。


経営者として感じる“ワンマン経営の壁”

今回の件で改めて考えさせられたのは、創業者経営のリスクです。

永守さんは一度CEOを退いたあと、結局自ら経営に復帰

誰にも任せられないという気持ちは私にもよく分かります。

でもそれが、結果的に組織のガバナンスを弱めることもあるのでしょう。

特に今の時代、「俺が全部決める」というスタイルは通用しません。

ガバナンスやコンプライアンスが求められる中で、

“独裁的リーダーシップ”は時代とズレ始めているのを感じます。


「数字を作る経営」から「信頼を積み上げる経営」へ

僕自身、日々の経営の中で数字目標を立てます。

でも最近は、「数字を追うこと」よりも「信頼を積み上げること」を意識しています。

売上や利益は結果であって、目的ではない

社員、取引先、金融機関、そして顧客からの信頼――それが積み上がった先に、安定した数字がついてくる。

今回のニデックの件は、まさに“数字を神格化した経営の末路”。

経営の本質は、数字を追い詰めることではなく、数字に支えられるだけの“信頼”を育てることだと、改めて感じました。


最後に:経営者に問われる「心の在り方」

経営は結果責任の世界です。でも、「結果さえ良ければいい」という時代は終わりました。

これからは、どんな過程でその数字を生み出したのかが問われます。

数字の先に“人”がいるか。信頼を裏切っていないか。

経営者としての心の在り方が、試される時代に入ったのだと思います。


まとめ

ニデックの不正会計疑惑は、

「数字への執着」と「ワンマン経営」の限界を日本全体に突きつけた事件でした。

私も経営者の端くれとして、

「数字よりも信頼を積み上げる経営」を貫いていきたいと思います。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



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