『ミドルエイジクライシス』もうひとつの言い方としては、『ミッドライフクライシス』と言いますが、40代から50代にかけて多くの人が経験する心理的危機のことで、「中年の危機」と呼ばれています。
人生の折り返し地点に位置して、自分の人生のキャリア、家族関係、健康状態などについて不安や疑問を感じてしまう状況になることのようです。
ひたすらに一生懸命やってきた人も、これまで流されるままに生きてきた人も、「このままでいいのか?」と立ち止まる時期で、やり残したことがある人は、「自分はこんなものではないっ」と焦りを感じてしまうようです。また、犠牲にしてきたことが大きい人は、「本来の自分自身を取り戻したい」という欲求を強くするかもしれません。
こういった気持ちはどの年代でも出てしまうものですが、40代になると体力の衰えを感じたり、職場での立場などで先が見えてきたりすることによって、人生の後半を意識し始めます。
そのため、「まだ今なら何とかなる」「これを逃したら先がない」と、精神的に追い詰められることが多いようです。
そんな私も40代半ばぐらいから同じように感じる日々に悩んでいます。そして同年代の経営者仲間もミドルエイジクライシスに陥っている人が増えているように感じます。
こんな気持ちになっていない?
子供が就職などで家から離れたことで急に静かになってしまった。夫婦の時間は増えたけど、自分が何を目指せばいいのか分からない。【子供の独立と家庭内の変化】
会社でのポジションは確立しているのに「このままでいいのだろうか?」という不安が押し寄せることがある。【キャリアの終盤に感じる不安】
家族や仕事のために尽くしてきたが、最近は「自分は何のために生きているのか?」と悩むときがある。【自分の価値への揺らぎ】
40代後半から体力が落ち、健康診断で再検査になることも増えた。体力の衰えを感じるたびに、時間の限りを意識して焦ることがある。【体の変化と健康の不安】
ミドルエイジクライシスとは、中高年が陥る心理的危機、うつ病や不安障害を言います。
タイミングは様々で、症状も重度なものから軽いものまで個人差があって、約8割の人が経験すると言われています。それは、事業で失敗した、離婚をしたなどのような人生の一大事もなく、人生を順調に歩んでいる人でも同じです。
自分と同年代の人が、大成功・大活躍しているのを見て、心が動揺し、嫉妬や羨望、ねたみなど気持ちを抱き、自信をなくしかねません。その背景は、中年頃に自分の限界が見えてきて、少し前なら巻き返せるという希望があったものがだんだん失われてしまうからです。
独身女性であれば、家族で楽しそうに暮らしている人を見て、焦りや孤独を深く感じる場合もあるかもしれません。
ここには人との比較があり、それによって「自己」が振り回されてしまうという状態にあります。今はSNSを通じて知り合いがどのような状況にあるのかが知りやすくなったり、個人の活躍がみえやすくなっているのも原因のひとつと考えられますね。
不安や焦りを乗り越えるには
自分の価値観、人間関係を見つめ直す時間を持つ
40代や50代になると、これまでの人生で形成された価値観が、実は自分自身のものではなく、社会や他人からの影響を受けて作り上げられたものであることに気づくことがあります。
また、心の底からの友達という関係ではなく、社会的な立場から人付き合いを続けている場合もあります。今こそ、自分が本当に大切にしているものは何か、何を成し遂げたいのか、どんな人と一緒に居ると自分らしくいられるのか冷静に考える時なのかもしれません。
健康を考えてフィジカルとメンタルのケア
体力の低下や、健康診断の結果が思わしくないことも、クライシスの一因となり得ます。そのため、まずは日常的な運動を取り入れることが重要のようです。
ウオーキングや軽い筋トレなどを習慣化することでストレス解消やメンタルケアにもつながっていきます。また、心の健康を保つためには、無理に頑張りすぎず、適度にリラックスできる時間を設けることも大切ですね。
新しいなにかを始めてみる
習い事として教室に通ってみたり、資格にチャレンジしてみるなど、これまで「やっていみたい!」と思っていてもできなかったことに着手するのもいいようです。新しい挑戦で新たな自分の可能性を発見して自信につながることもあるかもしれません。
大きい決断は慎重に
転職や引っ越し、離婚など人生に大きく関わることについては逆に慎重になった方がいいかもしれません。心が揺れている時期の大きな決断は意外とうまくいかないことが多いからです。
不安や焦りの気持ちから大きな決断をしたくなるものだが、周囲の信頼できる人に相談を重ねたり、どうしたいか自分に問いかけながら、ゆっくりと決めていっても遅くはないはずです。
ミドルエイジクライシスを抜け出すには
人生80年以上が当たり前の時代になっています。
「もう40代50代か」と考えることもできますが、「まだ40代50代。これからだ!」という考え方もできますね。ミドルエイジクライシスは誰にでも起こりうる人生の通過点に過ぎません。
そしてこのクライシスを抜け出すには今までやってきたことと正反対のことに取り組む必要があるのかもしれません。
人生前半は『手に入れる』『挑戦する』『頑張る』というプラスの方向が正しいことと考えて進みますが、人生後半はまったく別のベクトル、つまり「手放す」「あきらめる」「適度に休む」というマイナスの方向のことがキーワードになるかもしれません。
私自身、ものすごく人生を突っ走ってきた自負があります。しかし、50代になった今は少し勇気を出してマイナスの方向に進んでみようと思う今日この頃です。