最近の金利上昇がどのうように住宅ローンに影響するかを聞かれる機会が多いので解説していきます。
まずは最新の住宅ローン金利のグラフです。
グラフを見て分かる通り変動金利はずっと下がり続けている一方で固定金利はここ1.2年で少しずつ上がっている状況です。
固定金利が上がっている理由としては・・・
①アメリカの長期金利が上がってきている。
②日銀が7月末に金融政策を柔軟化して長期金利が上がることを容認した。
日米の長期金利がより上がりやすくなったため、長期金利に連動する住宅ローンの固定金利が上がっているという状況です。
ここで絶対に知っておいてほしいポイント!
固定金利→長期金利 (10年)
- 2016年1月にスタート
- 民間の金融機関が日銀に預けている預金金利をマイナス0.1%に
- ある種の罰金をとることで貸出を促進
②YCC(イールドカーブ・コントロール=長期金利操作)
- 2016年9月にスタート
- 10年物国債の金利をゼロ%程度に誘導
- 2022年12月:0.5%程度へ拡大
- 2023年7月:上限を1.0%に
- 2023年10月:「1%をめど」に柔軟化
繰り返しになりますが、住宅ローンの変動金利の行方を左右するのはマイナス金利政策です。
そもそも日銀がマイナス金利政策を続けるのは、賃金上昇を起点とした物価上昇という、日本経済全体に良い循環を起こすためであり、「マイナス金利政策を辞める時は、日本経済がいい循環に入った時」になります。
現在は物価が上がっていますがこれは原油高や物価高によるコストプッシュ型のインフレで、日銀が目指しているインフレではないのです。
日銀が目指すのは需要牽引型のインフレであり、賃金上昇によって引き起こされることが目標となります。
ということで賃金上昇が物価上昇に比べてまだまだ足りないことを考えると、マイナス金利政策をやめることはまだ先のことになると考えます。
日銀の安達審議委員も2023年11月に行われた松山市の公演にて、「マイナス金利解除がいつになるか言及できる状況にない」と発言しています。
つまり、マイナス金利政策をまだ続けるということが日銀のスタンスであると考えられます。
長期金利について日銀は、YCCの柔軟化によって、市場のメカニズムにある程度委ねるようになっています。
YCCをやめると長期金利はどうなっていくのか。
今の長期金利はアメリカの金利上昇が影響しています。グローバル全体では金利の上昇圧力は高いままで、日本の長期金利もじわじわ上がっています。
ただし、2024年には、アメリカの中央銀行にあたるFRBが利下げをするかもしれません。
仮にアメリカが利下げを始めると、長期金利は一転して下がって行きますので、住宅ローンの固定金利の上昇もストップして下がってくることになります。
■マイナス金利の解除はいつ
11月15日にGDPの発表がありました。マイナス2.1%と市場予想を超えるマイナス成長でした。物価上昇率に賃金上昇率が追い付かず、個人家計が圧迫され続けているのが原因です。
個人家計が弱い状態で、マイナス金利政策が解除されるのでしょうか。おそらくないはずです。
マイナス金利が解除されたとしてもゼロ金利にする程度であり、経済にはほとんど影響がないように思われますが、日本は過去10年以上も金利上昇の局面を経験してないため、様々な反動が考えられます。
例えば、住宅ローンの金利が上がらなかったとしても、「住宅ローン破綻者が今後続出するだろう」と不安をあおる人も出てきて、本来は消費に回るはずだったお金が繰り上げ返済に使われてしまう可能性もありますね。
我々日本人は家を失いたくないという意識が強いため、住宅ローン破綻を避けるために、ローン以外の支出を大きく削る可能性があります。そうなると、消費意欲がどんどん冷え込んで消費が減り、経済全体にはマイナスになっていきます。
ということで日銀がマイナス金利解除をどうしても行いたいと考えるのであれば、マイナスインパクトを乗り越えられるぐらいの強い経済状況でなければならないはずです。
■マイナス金利が解除された場合
もし、マイナス金利が解除されたとしても慌てないことが大切です。
マイナス金利が解除されるということは、景気のいいサイクルが回っているということになり、賃金も上がっているはずなので、ローン支払いの原資もあるはず。
また、ゼロ金利になったとしても、異次元の金融緩和から通常の緩和にするということなので、引き続き低金利であることは間違いないと考えます。
低金利環境であれば、住宅ローンはお得な商品であることに変わりなく、借り続けるメリットも大いにあると考えます。