プルデンシャル生命の「31億円・106人・30年以上」という数字は衝撃的でした。
ただ、経営者として見るべきポイントは金額そのものではなく、“単発で終わらない設計”が温存されていたことだと思います。
これは保険業界だけの話ではありません。
不動産業界も同じ条件を多く抱えています。
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商品が高額で、情報格差が大きい
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顧客が「会社」より「担当者」を信用して意思決定する
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成果報酬・歩合の比率が高い
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トッププレイヤーが強い発言力を持つ
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現場裁量が大きく、チェックが後回しになりがち
つまり、属人的な信頼で売上を作る組織ほど、制度の歪みが事故に直結するということになります。
1. 「性善説」で回る組織は、成長期ほど危ない
成長している組織は、だいたい次の順番で“見えない負債”が積み上がります。
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売れる人が現れる
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数字が伸びる
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そのモデルが「正解」になる
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例外が増える(本来のフローを飛ばす)
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トッププレイヤーの周りだけ、監督が弱くなる
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事故が起きる
不動産でも同じです。
「仕入れが強い」「仲介が強い」「投資家集客が強い」など、強みが明確なほど、そこがブラックボックス化しやすい。
そして厄介なのは、数字が出ている間は問題が見えにくいこと。
数字が出ているほど「現場の裁量」が正当化され、経営が踏み込みづらくなる。
2. 不動産で“不正が起きやすい導線”はだいたい決まっている
経営として見ると、不正は「悪意」よりも導線から生まれると思っています。
導線①:顧客と担当者が“密”になりすぎる
LINE・個人携帯・個人メールで完結し、会社にログが残らない。
ここが続くと、顧客は「会社」ではなく「担当者」に依存します。
依存が強まると、顧客はこう考えます。
「この人が言うなら大丈夫」
この瞬間に、会社の統制は一段弱くなる。
導線②:お金が“例外”で動く
不動産で一番危ないのは「例外処理」です。
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手付・申込金・預り金の扱いが現場任せ
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紹介料・業務委託費・情報料がグレーに運用される
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立替・つなぎ資金が“善意”で起きる
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入金先や支払名目が都度変わる
例外は、現場では「お客様のため」になりがち。
でも経営としては、例外はほぼ100%リスクです。
導線③:評価が“新規の数字”に寄りすぎる
新規契約・粗利・仕入れ本数…伸びる指標に偏ると、守りが死にます。
守りが死ぬと、コンプラは「売上の邪魔者」になります。
これは文化の問題に見えて、実は制度の問題です。
評価設計が文化を作るからだと思います。
3. 経営者がやるべきことは「監視」ではなく「構造の再設計」
こういう局面で「教育を徹底する」「モラルを高める」だけだと再発します。
経営がやるべきは、性格ではなく仕組みの変更ではないでしょうか。
① “密”を前提にしない(会社が必ず介在する)
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重要局面(契約、入金、条件変更、解約、返金)に会社窓口を必ず挟む
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連絡導線を統一し、ログを残す(CRM/会社メール/録音など)
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個人チャネルで完結させない
「担当者の信頼が価値」の会社ほど、ここをやらないと崩れます。
② お金の流れを“担当者から剥がす”
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預り金はゼロに近づける(会社口座・決済導線の一本化)
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紹介料・外注費のルールを明文化し、監査可能にする
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例外フローは許可制+記録必須にする
不正の多くは「お金の例外」から始まります。
だから経営は、例外を潰す設計に投資する。
③ 評価KPIを「新規」だけから外す
ここが一番効きます。
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書類不備率
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クレーム率
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入金遅延・返金発生
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事故(違反・是正)件数
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紹介率・継続取引率
トッププレイヤーほど、“守りKPI”を厳しく見る。
逆に言えば、ここを入れない限り「売上至上主義」は構造として残り続けます。
まとめ:事故は「悪い人がいた」では終わらない
経営の結論はシンプルです。
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仕組みが、歪みを生む
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歪みが、文化を作る
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文化が、事故を呼ぶ
だから、変えるべきは「人」より先に設計です。
不動産も、属人的信頼が強みであるほど、会社が介在する導線を作らないと、強みがそのまま弱点になります。




