東京23区「6割が億ション」時代はいつまで続くのか
最近の東京の新築マンション市況を見ていると、
「本当にこの価格、ずっと続くのか?」
そう感じる場面が、正直増えてきました。
2025年9月、東京23区で販売された新築マンションの6割が1億円超。
平均価格は9,000万円に迫り、供給戸数は過去最低水準。
数字だけ見れば「まだまだ強い市場」です。
でも、販売の現場に立つ人間としては、潮目の変化も同時に感じています。
暴落しない理由はシンプル
「作れない」から「高く売る」しかない
まず前提として、今の新築マンション価格が簡単に下がらない理由は明確です。
建築費が下がらない。むしろ高止まりしている。
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人手不足
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資材高
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働き方改革による工期延長
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ゼネコンの選別受注(逆営業)
正直、
「お金を出すから作ってください」
が通じない世界になっています。
大型再開発が止まり、中野サンプラザのように白紙に戻る案件が出るのも不思議ではありません。
結果としてデベロッパーはこう考えます。
郊外で薄利多売は無理
都心で厚利少売しか勝ち筋がない
これが、いまの富裕層シフトの正体です。
ただし、売れ行きには“ムラ”が出始めている
一方で、最近よく耳にするのがこんな声です。
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坪単価2,000万円超が動かない
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数億円の住戸だけ残る
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湾岸の築浅高額住戸が中古に出てくる
「富裕層はいくらでもいる」
――それは半分正解で、半分は違う。
富裕層ほど、値段にシビアです。
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立地
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商品企画
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将来のリセール
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相対的な割高感
このあたりを冷静に見ています。
価格を上げすぎると、ちゃんと“選別”される。
ここは、平成バブルの時と決定的に違う点だと思っています。
行政も「富裕層偏重」にブレーキをかけ始めた
もう一つ、見逃せない変化があります。
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引き渡し前転売の抑制
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外国人所有の把握強化
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過度な投機への監視
まだ「努力目標」レベルですが、国が問題意識を持ち始めたという事実は重い。
不動産は、
「規制が出始めた時が天井」
と言われることもあります。
私はそこまで悲観していませんが、値段をつり上げ続ける前提の事業モデルは、確実に難しくなると見ています。
金利は“今すぐ崩壊”ではないが、無視もできない
金利についても、冷静に見る必要があります。
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長期金利2%程度 → まだ耐えられる
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金融機関の融資姿勢 → 今はまだ緩い
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購入者の多く → 変動金利を選択
ただし、
「何も起きない前提」で動いている人が多すぎるのも事実。
私は常にこう考えています。
金利は「上がらない」のではなく
「上げられない状態が続いている」だけ
前提が崩れた瞬間、市場の空気は一気に変わります。
次の主戦場は「郊外 × 再生」
最近、私が注目しているのはここです。
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西千葉
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船橋
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所沢
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川越
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小平
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八王子
いずれも「都心を諦めた層の需要が溜まっている場所」。
新築だけでなく、
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団地の建て替え
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中古の磨き上げ
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沿線単位での再街づくり
派手さはないが、地に足のついた事業が、ここから増えてくるはずです。
まとめ:富裕層シフトは“永遠”ではない
今の新築マンション市場は、
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崩壊前夜でもない
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かといって、無条件に上がり続ける局面でもない
「踊り場」に入った
これが、私の率直な見方です。
これから求められるのは、
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値段を上げる力ではなく
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価値を設計する力
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場所を読む力
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時間軸をずらす発想
デベロッパーも、投資家も、「都心・高額」一択思考から抜けられるか。
ここが、次の5年を分ける分岐点だと思っています。




