統計からは見えない「外国人マンション投資」の正体
――経済紙の特集を読み、自分なりに整理してみた
最近、都心マンションの価格が異常なほど上がっています。
その背景には「外国人投資が影響している」という話をよく耳にするのですが、実際どうなのか気になり、先日とある経済紙の特集を読みました。
(ちなみに弊社のお客様はほとんどが日本人です。)
そこで印象的だったのが、
表向きの統計と現場の感覚がまったく一致していない
という指摘です。
国土交通省のデータでは、新築マンション購入者のうち外国籍は3.5%。
数字だけ見れば影響は限定的に見えます。しかし、現場で聞こえてくる声とは大きく違うのです。
仲介会社やデベロッパーへの取材をまとめた記事によると、
実質的な外国人投資比率は8〜30%に達している可能性もある
とのことでした。
最初は誤差が大きすぎると思いましたが、読み進めていくうちに理由が腑に落ちました。
外国人投資の多くが、日本法人を経由する「隠れ投資」になっているからです。
■ 統計に現れない“隠れ外国人投資”の仕組み
特集では、複数のスキームが紹介されていました。
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日本人・日本企業が設立した法人を“買収”して法人名義で取得
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資本金1円で合同会社(LLC)を設立して購入
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投資用の管理会社を日本に設立し、法人名義で購入
この場合、統計上は「日本法人=日本人」扱いになるため、国籍データには出てきません。
だから、実態が数字に反映されない。
この点については、現場の感覚のほうが正確だと素直に思いました。
■ 記事が指摘していた3つのリスク(整理してみた)
「外国人投資=悪」ではありません。
ただ、“居住目的ではなく投機目的”が増えていることが問題視されている点は見逃せません。
私なりの整理は以下の通りです。
① 生活環境・コミュニティの破壊
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投資用として買われた部屋が空いたまま
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もしくは民泊運用で住民が入れ替わる
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所有者の連絡先が不明でトラブル対応が困難
一部のマンション管理組合がすでに困っている、という実例も紹介されていました。
② 管理組合ガバナンスの弱体化
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修繕積立金の未納
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海外オーナーで連絡が取れない
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法人名義が増え意思決定が難航
普通に住む人にとっては致命的で、資産価値が下がる方向に働く可能性が高いです。
③ 市場価格のボラティリティ上昇
特集の中で特に印象に残ったポイントです。
外国人投資は日本の景気とは連動しづらく、
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為替
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海外の規制
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自国での資金需要
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地政学リスク
などの外部要因で一気に買い→売りへ転じる可能性があるとのこと。
短期売買の比率が高まると、高騰と暴落の振れ幅が大きくなる=地域が不安定化するリスクがあります。
■ 記事が提言していた「改善策」4つ
読みながら「これは必要だろう」と感じたのが以下の制度整備。
| 改善策 | 狙い |
|---|---|
| 最終受益者の把握(UBO) | 実質的所有者の透明化 |
| 法人名義購入の統計整備 | “隠れ外国人需要”の可視化 |
| 民泊・短期売買のルール強化 | 投機的売買による価格変動の抑制 |
| 管理組合ガバナンスの支援強化 | 修繕費未納・民泊問題の対策 |
ポイントは、排外ではなく透明性の確保。
市場が透明であれば、投資も居住も両立が可能。
■ 氷山に例えると分かりやすい
記事のまとめ方が秀逸だったので印象に残っています。
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今の国交省の統計:水面に出ている氷の先端(3.5%)
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法人スキームによる実態:水面下に隠れている巨大な塊(8〜30%)
氷山の“見える部分”だけを見て市場の安全性を判断するのは危険。
水面下まで把握してこそ、価格変動リスクに対応できる。
これは非常に納得感がありました。
■今回のまとめ
✔ 外国人投資の“量”ではなく“中身”が問題
✔ 居住目的 < 投機目的 になっているエリアではリスクが拡大
✔ 対策の本質は「規制強化」ではなく「透明性の確保」
✔ 市場の透明性が上がれば、投資家・居住者双方にとってプラス
都心マンション価格はいま、前例のない水準にあります。
だからこそ、価格を押し上げている力が何なのかを正しく見極めることが重要。
今回読んだ特集は、目先の価格だけでなく、
「この構造のまま進んだら数年後どうなるのか?」
という視点で見直すきっかけになりました。
このテーマは引き続きウォッチしていこうと思います。




