相続税評価が「路線価」から「購入価格」へ?
──タワマン節税の終了だけでは終わらない、2026年度税制改正のインパクト
不動産を活用した相続税対策が、大きな転換点を迎えようとしています。
いわゆる「タワマン節税」の封じ込みを皮切りに、政府・国税庁が次に狙うのは 一棟マンション節税と不動産小口化商品を使った節税スキーム。
2025年11月、自民党税制調査会の会合において、2026年度税制改正大綱に向けた新たな規制方針が示されました。
最大のポイントは次の一文です。
「相続の5年以内に購入した不動産は、路線価ではなく購入価格ベースで評価する」
つまり、相続直前に不動産を購入して相続税を大きく圧縮する手法が使えなくなるということです。
◆ そもそも「不動産で節税できる仕組み」はなぜ生まれたのか?
現在の相続税評価には、大きな構造的歪みがあります。
| 種類 | 税務上の評価 | 実際の市場価格 |
|---|---|---|
| 現金 | 100% | 100% |
| マンション(特に賃貸) | 50〜70%程度 | 100% |
同じ資産1億円でも、現金で持つか → 不動産に替えるかで、相続税負担が大きく変わる。
これが「節税スキーム量産の源泉」。
なかでも、収益性の高い賃貸マンションほど市場価格は高くなる一方、相続税評価では低く算定されるため、節税効果が大きくなっていました。
◆ 規制第1弾「マンション通達」=タワマン節税の終了
2024年1月から区分マンションの評価方法が見直され、
相続税評価額が市場価格の6割未満にならない
という新ルールが導入。
タワマン節税は実質終了。
しかしスキーム自体が消えたわけではありませんでした。
◆ 次に狙われたのは「一棟マンション」+「不動産小口化商品」
● 一棟マンションはマンション通達の適用外
● 相続直前の駆け込み購入で節税が可能
国税庁が会合で示した例では、
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21億円で一棟賃貸マンション購入
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相続時評価:4億円
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相続税圧縮効果:約8億円
これを「異常」と判断し、制度改正へ。
さらに最近は、不動産小口化商品(信託受益権)の売買を活用した節税スキームも拡大しており、贈与税・相続税の圧縮効果が90%近くになる商品も存在。
これも規制対象になる見込み。
国税庁の姿勢は明確です。
「不動産を利用すれば相続税が極端に減る状況を放置しない」
◆ 新ルールが導入されたら不動産投資家は困る?
結論:長期保有・キャッシュフロー目的の投資家はほぼ影響なし。
弁護士いわく、
「相続直前の駆け込み購入を封じるのが目的。不動産投資家への影響は限定的」
つまり…
✖ 税金のためだけに買う → 時代遅れへ
◯ 投資として利益が出る不動産を買う → まったく問題なし
むしろ影響を受けるのは、
・不動産投資をやってこなかった高齢富裕層
・金融機関の提案で節税目的で購入していた人
になってきます。
◆ 今後注意すべきこと
税理士・弁護士の指摘をまとめるとポイントは2つ。
① 相続税目的だけで不動産を買わない
税務署に動機を疑われる最大のリスク。
特に「金融機関の稟議書」には要注意。
ローン書類に「相続税対策」などの文言が入ると調査時のリスクが高まる。
② 相続対策は“時間をかける”以外に抜け道はない
急ごしらえの相続対策は必ずバレる
“長期計画 × 税理士相談”しか王道はない
◆ 投資家にとっての本質
今回の税制改正は、
「節税のために不動産を買う時代の終わり」
を象徴しています。
しかし、裏を返せばこうも言えます。
節税ありきの投資家が消え、収益性のある不動産だけが生き残る市場になる
これは正常化です。
実需・収益性・エリアの利回り・需給の見極めができる投資家こそ、次の10年の勝者になってくるでしょう。
◆ まとめ
| これまで | これから |
|---|---|
| 不動産で相続税が大幅に減る | 5年以内購入は購入価格ベースに |
| バレなければOK | 国税庁は抜け道の網羅へ |
| 節税のための不動産 | 収益のための不動産 |
不動産と相続税の関係は今後さらに注目テーマになっていきます。
今後のキーワード:
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賃貸マンションの評価見直しはさらに広がる?
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小口化商品の規制ラインはどこまで?
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「相続対策 × 不動産」の新しい常識は何か?
アップデートがあればまたまとめます。




