【家が高すぎる今】都心近郊で「戸建て賃貸」は当たり前になるのか?
――ケネディクスが開拓する“新しい住まい方”を、不動産業者の視点で解説
最近、都心近郊のマーケットを見ていて気になる変化があります。
それが 「戸建ての賃貸」 という新しい住まいの選択肢が、静かに広がっていること。

従来、賃貸といえば「マンション・アパート」が99%。
戸建て賃貸はニッチの極みでした。
ところが今、その市場を本気で開拓している企業があります。
不動産運用大手の ケネディクス です。
今日は 「なぜ今、戸建て賃貸なのか?」 を、不動産デベロッパーとして日々土地や建物を見続けている私の視点でまとめます。
◆ コロナ以降、“広い家ニーズ”が一気に増えた
ケネディクスが戸建て賃貸ブランド 「コレット」 を立ち上げたのは2021年。
ちょうどリモートワークが定着し、家で過ごす時間が長くなり、
「もっと広く暮らしたい」
というニーズが一気に増えた時期です。
提供するのは 3LDK〜5LDKの広めの戸建て。
しかも、一都三県だけで開始から4年で約3,500戸供給。
この数字は、賃貸戸建てとしては“ほぼ業界トップレベルのスケール”です。
◆ 価格が破格。“木造戸建て”だからこそ出せる家賃設定
この「コレット」が人気の理由のひとつが 価格。
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80㎡で月20万円台の相場
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千葉の主要駅から離れれば 5LDKで10万円台前半も
これは正直、不動産を扱う側から見てもかなりインパクトがあります。
なぜそんな価格にできるのか?
答えはシンプルで 木造で建てているから です。
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RCマンションの建築費:坪単価 200万円弱
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木造戸建て:坪単価 60〜70万円
→ コストが1/3で済むから、賃料も抑えられる。
→ それでも十分に採算が合う。
供給元の大半を担っているのが、オープンハウスグループ と 飯田グループHD の住宅メーカー。
“量産型の建売開発”を得意とする住宅メーカーの力を、うまく活用していますね。
◆ 戸建てなのに“管理負担ゼロ”。スマートホームでマンション並みに
本来、戸建て賃貸は管理が大変。
部屋が散らばるし、トラブル対応もマンション以上に手間がかかる。
そこでケネディクスは 東急住宅リース に全部委託。
入居者は24時間チャットで相談可能。
さらに、戸建てで不安になりがちな
「冬寒い・夏暑い」「セキュリティが心配」
といった問題をなくすため、スマートホーム化。
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スマートロック
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室温・湿度の自動調整
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照明の遠隔操作
マンションの設備に負けないレベルまで引き上げています。
これは入居者受けしやすいですね。
◆ 入居者の半数が“法人”。さらに意外なニーズが拡大中
面白いのが、入居者の約50%が法人。
社宅・転勤者住宅 として非常にハマるとのこと。
そしてもう1つ、僕が特に注目しているのが、二人世帯(DINKS)が最も多い という事実。
子育てもまだ、そして転職の可能性もある。
「まず賃貸で広い家に住みながら、ライフプランを固めたい」という20〜30代が急増しています。
いわゆる “家を買う前のお試し” としての需要が確実に高まっています。
マンション価格が平均1億円を超えた今の東京23区では、これはむしろ当然の流れのような気がします。
◆ 戸建て賃貸は“投資商品”としても成立し始めた
ケネディクスの本丸は“ファンド運用”。
戸建て賃貸も最初から ファンド化ありき で設計されています。
累計投資1,500億円のうち、すでに660億円はファンド化済み。
第一生命など年金・機関投資家も参加。
さらに2024年には、個人富裕層向けのデジタル証券(想定5.4%) も実施。
戸建て賃貸は普通なら「空室で収入ゼロ」のリスクが大きいですが、ファンドで数百戸に分散すれば大幅に安定します。
これは富裕層の不動産投資の“新しい選択肢”になる可能性が高いです。
ケネディクスは10年で1兆円・2万戸の取得 を目標に掲げているようで本当すごいですね。
◆ 日本にも“アメリカ型”の戸建て賃貸が広がるのか?
日本では現在、賃貸戸建ては全体の8%程度。
70㎡以上の広さを持つ借家は一都三県でもわずか9%。
一方アメリカでは、賃貸住宅の35%以上が戸建て、専門REITも存在するほど巨大な市場です。
物価高・住宅価格の高騰・働き方の変化。
これらが重なった今の日本では、「広いけど買えない」層が急増しています。
そこに 戸建て賃貸 という新しい選択肢がピタッとハマってきている。
個人的には、都心から30〜60分圏の郊外で“戸建て賃貸開発”は今後伸びると強く感じています。
土地の仕入れが上手い会社(オープンハウス・飯田など)が組むことでスケールも出せる。
不動産ファンドと組めば資金調達も強い。そして入居者ニーズも明確に存在する。
今はまだ“兆し”レベルですが、5〜10年後には日本でも 戸建て賃貸が一般的な住まいの選択肢になる 可能性があります。
◆ 最後に:「参入ポイント」
もしこの分野に参入するなら、個人的には以下がポイントだと思っています。
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駅近より「車移動前提の街」
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30〜40坪の戸建て区画が量産できる土地
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近隣に学校・病院など生活利便性がある場所
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建物の質より“賃料バランス”を重視
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アプリ管理×スマートホームがマスト
戸建て賃貸は「売れ残り土地の出口」でも活用できるため、不動産業者としては非常に“使い勝手が良い商品”です。
本気で参入を考えます。




