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タワマン転売に「待った」!三井不動産が打ち出した異例の抑止策とは

三井不動産が踏み込んだ「タワマン転売規制」ー業界の転換点になるか?

2025年11月、三井不動産レジデンシャルが再開発プロジェクト「セントラルガーデン月島 ザ タワー」で、前例の少ない「転売禁止条項」を導入しました。

これにより、引き渡し前に転売行為が確認された場合、手付金(約1000万円)を没収し契約を解除するという厳しい内容です。

一見すると強気な対応ですが、この動きが業界全体の流れを変える可能性があります。


■ 三井不動産が打ち出した「明確なメッセージ」

今回の通知は、約1300人の購入検討者に向けて送られました。

「売買契約後〜引き渡し前における転売活動を禁止」するもので、物件情報の提供や広告掲載までを含めて制限しています。

要は、「実需で購入する人を優先したい」「投機目的の買い占めを抑えたい」という明確な姿勢の表明です。

販売価格は1億円台半ば。手付金が1割なら約1000万円――それを失うリスクを負ってまで“転売狙い”をする人は減るでしょう。

その意味では実効性よりも“抑止力”としての効果が狙いと言えます。


■ 「曖昧な定義」と法的リスク

一方で、弁護士の見解は「違約金としての妥当性」と「売却活動の定義」に注意を促します。

「契約違反として違約金を設定すること自体は合法ですが、内容が過度だと消費者契約法や公序良俗に抵触する可能性がある」

と指摘。

さらに、「物件情報の提供」や「広告活動」といった表現が曖昧な点も課題としています。

どの行為が「違反」となるのか線引きが難しく、現場での判断がグレーになりやすい部分です。

このあたりは、法的拘束というよりも“けん制的”な意味合いが強く、

現実的に契約解除まで持っていくのはハードルが高いと思われます。


■ 投機抑制としての意義と限界

この条項のポイントは、引き渡し前の転売に限っていること。

つまり、登記が完了した後の売買(所有権移転後)は自由です。

不動産の「所有権」というのは極めて強い権利であり、引き渡し後に「転売禁止」とすることは、法的にかなり難しい。

(実際、今年7月に千代田区が「引き渡し後5年間の転売禁止」を要請した件も、実現性に疑問の声が上がっています。)

とはいえ、三井不動産のような大手がこうした“姿勢”を打ち出したこと自体が大きなインパクトです。

「金融商品化されたタワマン」への警鐘として、今後の業界に一定の歯止めをかける可能性があります。


■ 他のデベロッパーにも波及するか?

不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏はこう語ります。

「市街地再開発のように公共性の高いプロジェクトでは、同様の条項が“テンプレート化”される可能性がある」

都心3区(中央・港・千代田)を中心に、今後は同様の“転売防止条項”を盛り込む動きが広がる可能性が高いですね。

特に再開発案件では、自治体や地域住民の目も厳しく、企業イメージの観点からも無視できません。

一方で、自由経済の原則とのバランスも問われる局面。

「誰がどこまで市場をコントロールすべきか」という根本的な議論にも発展していく可能性があります。


■ 結論:実需回帰への小さな一歩

今回の三井不動産の措置は、法的な拘束よりもメッセージ性に意味があると思います。

「投資ではなく、暮らすための家を提供したい」
という理念を、形式ではなく行動で示した――それが今回のニュースの本質だと考えます。

タワマンが“転売益を得るための商品”から、“居住のための資産”へと戻っていくのか。

この取り組みはその転換点になるかもしれません。


💡まとめると・・・

  • タワマン転売規制は実効性よりも象徴的効果が大きい

  • 他社も追随する可能性があり、特に再開発案件では標準化へ

  • 市場全体が「投資から実需」へと回帰する転換期に差しかかっている

ということになるのでしょうか。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



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