近年、建設業界はかつてないほどの倒産ラッシュに見舞われています。需要は旺盛であるにもかかわらず、多くの企業が市場から姿を消すという深刻な矛盾が生じています。
今回のブログでは、その背景にある構造的問題や経済要因を整理し、不動産市場への影響を考察します。
1. 建設業界の現状と「需要があるのに潰れる」矛盾
建設業界の倒産件数は増加の一途をたどっており、
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2023年:1,671件
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2024年:1,890件
と過去10年で最多を更新。さらに2025年上半期だけで986件と、下半期を待たずに年間最多を超える可能性が濃厚です。
一方で需要は確実に存在しています。
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インフラ老朽化対策(道路・橋・上下水道の更新)
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都市再開発やマンション建替え需要
この「旺盛な需要」と「急増する倒産件数」の矛盾が、業界の構造的問題を浮き彫りにしているといえます。
2. 倒産を加速させる主な要因
構造的な問題
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人手不足の深刻化
若年層の入職率低下と大量退職を迎える「2025年問題」で人材難が加速。 -
労働時間制限による効率低下
働き方改革で残業が制限され、必要労働力が増加。 -
後継者難の顕在化
2025年には倒産理由として「後継者不在」が増加。 -
多重下請け構造
賃金が中抜きされ、現場労働者に魅力を感じさせない仕組みが若者離れを加速。
経済・労働環境の問題
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物価高と資金繰り悪化
資材価格の高騰に加え、中小企業ほど高値で調達せざるを得ない構造。 -
コロナ融資の返済開始
特別融資の返済が重荷となり、資金繰り悪化。 -
劣悪な労働環境と低待遇
未経験者給与20〜25万円水準では「危険労働に見合わない」と若年層が敬遠。 -
デジタル化の遅れ
DX導入の遅さが効率化を阻害し、業界の魅力を削ぐ要因に。
特に中小建設会社は「物価高」「融資返済」「人件費高騰」の三重苦に直面し、わずかな資金ショックで倒産に追い込まれやすいのが現実です。
3. 不動産市場への波及効果
建設業界の倒産ラッシュは、不動産市場にも直接的な影響を与えます。
① 建築コストの上昇
「材料費」と「人件費」が同時に上昇しており、新築マンションの販売価格や賃料が押し上げられています。
② 市場の二極化と再編
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大手ゼネコンに人材・資金・案件が集中し、零細企業は淘汰される流れ。
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後継者難を抱える企業を中心に、M&Aや事業譲渡が加速。
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生き残れるのは「人材確保」「労働環境改善」「DX推進」に踏み切れる企業のみ。
③ 既存資産へのシフト
新築供給は減少傾向となり、中古物件やリノベーション需要が拡大。
「スクラップ&ビルド」から「既存ストック活用」への時代転換が進んでいくでしょうね。
④ 住宅購入者・投資家の意識変化
施工会社の倒産リスクが高まる中、購入者は企業の信頼性や完成保証制度を重視。大手・信用力のある会社に人気が集中するかもしれません。
まとめ
建設業界は、需要があるにもかかわらず倒産が加速する「構造的危機」に直面しています。人手不足、後継者難、資金繰り難といった問題は一過性ではなく、業界の存続そのものに関わる本質的課題です。
不動産市場においては、
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新築の高騰・供給減少
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中古・リノベ需要の拡大
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施工会社の信用力の重要性増大
といった変化が進むことは避けられません。
投資家や不動産オーナーにとっては、「誰が建てるか」「どの会社と組むか」がこれまで以上に重要な判断軸となっていきますね。