言葉の壁や与信チェックの厳しさがあり、外国人が日本で家を借りるハードルは依然高いままです。
確かに、私が現在保有している物件に“空き”が出た際も『外国人の方』と言われると躊躇してしまうことが多々あります。
そうした中で、外国人向けの不動産仲介スタートアップが急成長しています。
その中でも2022年創業の「E-Housing(イーハウジング)」というウズベキスタン人が創業した会社は、3期目で売上3倍を達成し、2025年の売上は13億円を目指すとしています。
来日する外国人に特化し、TikTokやInstagramによる集客を中心に、これまで1000件以上の契約を実現している。
今まで通り日本人ばかりに目が行き、売上・利益に苦戦している日本の不動産会社も考えるときが来たのかもしれません。
起業のきっかけ
創業者のエリック・ナスリディーノフ氏自身が日本で部屋を借りるときに苦労したのがきっかけのようです。
2018年にウズベキスタンから東京に留学に来て、はじめは学生寮に住んでいた氏は、寮のルールで1年で退去しなくてはならず、一人暮らしを始めることに。
しかし物件を探し始めてすぐに、家を借りるハードルの高さに気付いたとのことです。
不動産会社に電話しても、最初は「物件に空きがあります」と言われるのに、外国人だと告げた途端に「オーナーの意向で取引できません」と断られてしまう。
その後も、10件以上立て続けに断られ、ようやく見つかった物件でも、6カ月分の前家賃や日本人の連帯保証人などを求められたこともあったそうです。
氏のような経験は学生さんだけではなく、年収2000万円を超える外資系金融機関に勤める社員でさえも、同じような経験があるということです。
たしかに、私のような不動産オーナー側としても不安がいっぱいです。
言葉が通じづらい上、文化の違いによるトラブルが起こったり、突然帰国してしまったりするリスクも考えると、「正直、あまり貸したくない」と思うのも当然です。
そこで、両者の課題を解決したいと思い、訪日外国人に特化した不動産仲介のプラットフォームを立ち上げたようです。
『チャット』のみで家が借りられるのが特徴
最大の特徴は、物件の検索から内見予約、家賃保証、アフターサービスまで、家探しのすべてを一気通貫でサポートしていることです。
契約ごとに英語やフランス語、ロシア語など多言語に対応した専任の担当スタッフがつき、チャット形式で取引を進めます。
賃貸のみならず、売買やショートステイにも対応しています。オンラインで完結するので、海外からの家探しも可能のようです。
現在、E-Housingでは高価格帯の物件が多く、賃貸では月15万〜50万程度、売買の場合8千万〜数十億円の物件がメインです。
ユーザー層は、全体の7割が欧米圏の高所得層で、残り3割は、アジア圏などの富裕層です。
創業から2年ほどで、問い合わせ件数は1万件を超え、契約実績は1000件になったというので驚きですね。
ユーザー数の増やし方
TikTokやInstagramのコンテンツからの流入がほとんどみたです。
大学卒業後、コロナ禍もあり帰国せずにそのまま新卒で日本の不動産会社に就職した氏は営業をしていたようです。
その時、内見の合間の時間に、スマホで撮影し始めたのが始まりのようです。
今でこそ、不動産系のショート動画も増えましたが、当時は日本の物件の動画を上げる人がほぼいなかったので、物珍しさもあった動画はTikTok上で想像以上にバズりました。
累計3000万回以上再生され、中には数十万PVを超えるショート動画もあったほどです。
SNS経由での問い合わせがほとんどのため、マーケティングコストはほぼかかっていないようです。
コンテンツの見せ方にこだわっている同社は、TikTokの動画を見て50億円規模の物件を購入したお客さんもいるのがびっくりです。
独自の『信用スコア』をローンチ予定
基本的に、日本に住んだことがない外国人は、日本での信用スコアがありません。
外国人が家を借りることができない要因の1つになっていますが、スコアがないだけで、支払う能力のある人は多くいます。
そこで、E-Housingでは、海外の信用機関と連携し、その人の母国での年金支払い履歴や銀行取引履歴、クレジットスコア、犯罪歴の有無などを総合的に分析して、独自の信用スコアを出す仕組みを作り今年ローンチする予定みたいです。
日本での契約履行が、母国での信用スコアにプラスになるように、信用情報が相互参照できるような仕組みも整えているとのこと。
テクノロジーを使って、国籍に関係なくその人の信用を可視化できるようにするのが当面の目標と氏は語っています。
日本人オーナーが懸念する『外国人の与信』がクリアできるのであれば、この市場はさらに活性化するのは間違いないですね。
まとめ
日本での外国人の不動産仲介市場規模は、約600億円とも言われています。
訪日客の増加などにより、日本の物件に興味を持つ人も増えているため、市場のパイはさらに広がると言われています。
我々日本の不動産事業者は、昔から『外国人』と聞くだけで、敬遠してきた節があります。
日本の人口が減少し続ている中、もはや日本人だけをターゲットにしていると、“ジリ貧”になる可能性が高いと思っています。
デフレからインフレに移行して円安の時代を生きている今、経営の目も様々な方面に向けるときがきたかもしれません。