恐るべし中国・・・。
ジャック・マーさんで有名なアリババ傘下の金融会社アント・グループが11月5日に予定していた上場(IPO)を延期しましたね。ん?
“延期させられた”の方が正しい言いかたでした。
今回はこのアント・グループ上場延期について詳しく解説していきます。
アント・グループってどんな会社?
スマホ決済「アリペイ」を運営などをしていて決済から融資まで幅広く事業を展開しています。
このサービスを利用しているユーザーはなんと10億人を超えているそうです。
なぜこんなにユーザー数が多いかというと、親会社である“アリババ”が行っている生鮮食品や宅配などの決済を全て行っているからです。
このアントは世界6位のアプリ利用者数になります。
ただし、スマホ決済アプリに限定すると、アリペイはアップルペイの4.4億人をかなり上回る世界1位の会社なのです。
★交通:飛行機や高速鉄道の予約、地下鉄やバスの決済
★生活サービス:通販や生鮮スーパー・弁当宅配、レストランの予約、映画などのチケット予約
★金融:決済・送金、資産運用、保険、融資等
★公共サービス:公共料金支払いやスマホ料金の支払い
アリペイの年間取扱額のすごさ!
アリペイの年間取引額は17兆6000億ドルといったものすごい数字ですが、これは昔から有名な米クレジットカードのvisa、マスターカード、アメックス3社の合計額よりも上回っているという現実があります。
どのように成長していったのか?
2000年代前半の中国ではクレジットカードが普及していないいわゆる“金融インフラ”が未熟でした。
そこで、ECサイト「タオパオ」を運営するアリババはアリペイの事業を通じて自らリスクを取り、未払いや詐欺を防ぐために取引を仲介することで、ネット取引上の「安全性」「信用」を担保したのです。
アリペイはタオバオの成長に大きく貢献しましたが、これにより得た副産物はさらに大きかったようです。
それは、取引ごとに蓄積されていく莫大な量の「データ」です。
信用を担保したことで得た信用データを用いて新たな金融サービスを開発、アントグループの中核事業となっています。
アント・グループがIPO(上場)した場合
アリペイを運営する「アント・グループ」が予定通り上海と香港株式にIPO(上場)した場合の調達額は350億ドル(約3.7兆円)になるという報道もあり、もし実現していたら2019年12月に上場したサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコ(294億ドル)を超える史上最高になると言われていました。
そして時価総額は30兆円になるのではないかとも予想されていました。
この時価総額を他の金融会社と比較する下記の表になります。
予想された時価総額はペイパルやバンク・オブ・アメリカを凌ぐ時価総額です。
11月5日に上場するはずが延期に・・・。何があった?
結局2日前の11月3日の夜に延期が決まったようです。
中国証券監督管理委員会と中国人民銀行(中央銀行)、中国銀行保険監督管理委員会、国家外貨管理局が、アントの経営権を実質的に握るアリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)氏らを呼び出し指導を行ったと発表しました。
この中国金融当局の介入にはジャック・マー氏のある発言が関係していると言われています。
この発言の意図は『金融のイノベーションと同時に金融の監督も進化する必要性がある』と訴えたようですが、公然と当局を批判したとして大きく報道されました。
その結果、「アントのサービスと銀行発行のクレジットカードには本質的な違いはない」また、「混乱の本質は国民のために利用すべきデータを、一部の企業が自らの利益のために利用し、消費者から高いサービス料を徴収していること」として、当局から批判を受けます。
そして、人民銀行と銀行当局は11月2日、オンライン小口消費者金融に関する新たな規制案も公表すこととなります。
この新たな規制はアントの消費者金融サービス事業への影響も大きく、当局の指導と合わせてIPOを延期するという判断につながったようです。
出る杭は打つという中国のすごさ!
このアント上場延期のニュースは、中国の怖さを改めて思い知らされましたね。
当然、こんなに大きくなったアント・グループを潰すことはないとは思いますが、どんな企業でも我々に反抗したら振り出しに戻すという力技がエグイです。
グレーな部分を放置してイノベーションを起こしていき、問題が起きた時に初めて規制をかけていくのが中国流なのに、いったん認可までして、それを上場直前になって指導や新規規制で介入すことは今まで聞いたことがなかった気がします。
中国政府と一定の距離感を保ちながらアリババ集団を成長させてきたジャック・マー氏。
昨年9月にアリババ会長職を退任し、今年9月には取締役からも退きました。
このままジャック・マー氏も黙っているのか?アント・グループの上場はいつになるのか?
今後も注目していきたいですね。