ビジネスと不動産経済を本気で考えるブログ

経営ビザ厳格化は不動産市場を揺らすのか——中国系ペーパー会社乱立の裏側と“移民ビジネス”の実態

経営ビザ厳格化で揺れる中国系コミュニティ——不動産の現場から見える「移民ビジネス」の正体

不動産デベロッパーとして土地・建物の取引に携わっていると、
ビザ制度の変化や外国人の移住トレンドは、マーケットに確実に影響を与えるテーマだと実感します。

最近、特に関係者の間で話題になっているのが、
「経営・管理ビザ(経営ビザ)」の取得要件の厳格化です。

表向きは入管制度の話に見えますが、不動産の現場で起きていたことはもっと生々しい——
そしてそれが今回の規制につながっています。

そういった内容が読売新聞が記事にしていたので不動産デベロッパー視点で整理してみました。


■大阪で起きていた“異常な現象”と不動産の関係

報道されているように、大阪市内の築古ビル5棟で、
3年間で中国系法人が677社登記されていたという調査結果が話題になりました。

現場感覚から言うと、

  • 築古の雑居ビル

  • 家賃は安い

  • 立地はそこそこ

  • ワンフロア複数社登記

この“条件”が揃う物件が、近年 外国籍の法人登記の集中地点になっていたことは、
不動産プレイヤーの間では暗黙の共通認識でした。

「なぜそこにこんな数の法人が?」
そう疑問に思っていた業界関係者も少なくなかったはずです。

そして蓋を開けてみると、そこには

事業実態のない“ペーパー会社”を大量生産する“移民ビジネス”

が存在していたというわけです。

法人登記が目的で、賃貸物件は“住所の分譲”。
ビザ取得が目的で、法人は“移住パスポート”

まさに不動産を入口とした制度の抜け道が構造化されていました。


■日本側協力者の“名義貸し”が制度を歪めた

今回の件を語る上で欠かせないのが、日本側協力者の存在です。

彼らは実務には関わらず、“取締役名義”だけを提供し、
100社以上の法人に名前を貸していた例もありました。

不動産業界で言うところの名義貸しの横展開

・本人の所在は曖昧
・代表者は中国在住
・オフィスは築古雑居ビル
・事業実体なし
・“来日手続きを手伝う”という大義名分

こうしたケースが増えれば、制度側が規制に動くのは当然ですね。


■「厳格化」はなぜ起こったのか?そして何が変わったのか

今回の経営ビザの変更内容のコアはこれ↓

ビザ更新に「1名以上の常勤職員雇用」を義務化

つまり、
“ペーパー会社”は確実に排除する方向へ舵が切られたということ。

その結果——

  • 中国系経営者の間で動揺

  • SNSで「さようなら日本」「帰国しかない」と悲観的発信が急増

  • 毎週開催の“経営者交流会”で対策情報の共有

という状況になっています。

正直、制度改正は悪用を止めるための必然ですが、
真面目に起業している人も巻き込まれてしまっているのが現実です。

特に、

・子どもが日本の学校に通っている
・家族帯同で生活基盤を築いている

といった家庭にとっては、ビザ問題=人生設計に直撃します。


■不動産市場への波及はあるのか?

デベロッパー視点で見ると、このテーマは無視できません。

✔ 賃貸マーケット

・“住所目的の賃貸需要”は急減する
・築古雑居ビルのオーナーは影響大
・ビル一棟の収益構造が変わる可能性

✔ オフィス需要

・小規模登記特化型の物件は空室率上昇の可能性
・「レンタルオフィス型ビジネス」の整理が進む

✔ 住宅・居住系

・家族帯同の長期滞在が減れば、居住用賃貸に変動
・子どもの教育目的で来日した層の退去が進む可能性

外国人投資の増加・円安・インバウンド……
近年の不動産は“国際影響”を避けて通れません。

今回の経営ビザ規制は、
“不動産 × 移住 × 法制度”の新たなフェーズ突入のシグナルと言えます。


■今回の出来事が示した「現実」

不動産を生業にしている立場から見ると、今回の件が象徴していたのは

不動産は制度・国際情勢・人口動態の“交差点”である

ということ。

土地建物は静的な資産ですが、そこに人・制度・資金が連動すれば、マーケットは一気に変化します。

今回の経営ビザ問題はまさにその典型例だと思います。


■終わりに(不動産プレイヤーとして思うこと)

ペーパー会社乱立に歯止めがかかるのは当然。
しかし、制度改正が真っ当にビジネスしている外国人経営者を追い詰める形になるなら、

・支援施策
・段階的移行措置
・モデル事例の提示

が必要なのも事実です。

今後は、

  • 「移住」を目的としない純粋なビジネス型外国人投資

  • 日本で消費・雇用・納税を生む起業家の受け入れ

  • 不動産を“住所提供”ではなく“価値提供”に戻す

こうした方向へ制度が整えば、日本の不動産市場にもポジティブな循環が生まれるはずです。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



SNSで最新情報を配信しています

関連記事

  • インフレ・金利・地政学は要警戒?2025年相場のリスクシナリオと備え方
    2025年11月12日

  • 50代の今、ようやく腹落ちした『DIE WITH ZERO』──貯めるより、味わい尽くす生き方へ
    2025年11月6日

  • ライディックスの事業内容

    ライディックスの事業内容
    2018年6月14日

  • 35年では届かない家を、どう買う?増えてきた“50年ローン”をわかりやすく整理してみた
    2025年11月24日

  • Lidix Online

    ライディックス株式会社のオウンドメディアです。ライディックス株式会社は、東京都練馬区より投資用アパート、戸建住宅を提供している会社です。

    Lidix Onlineは主にライディックス株式会社の代表 山上が考えるビジネス・マーケティングの視点から不動産を取り巻く環境について、情報発信を行っています。

    私達の事業分野である不動産は、あくまで社会経済の一部です。より堅実な投資とは何かを考察するため、日々マクロな視点とミクロな視点で社会情勢を追いかけています。


  • 新着記事

    • 「アドバイスを求めて失敗する人」と「成功する人」の決定的な違い——最近の実体験から気づいたこと 2025年12月7日

    • 経営ビザ厳格化は不動産市場を揺らすのか——中国系ペーパー会社乱立の裏側と“移民ビジネス”の実態 2025年12月6日

    • 東京マンションはもう“安全資産”ではない──空室率70%が示す崩れ始めた神話 2025年12月3日

    • もう節税のために不動産は買えない──相続直前の駆け込み購入が封じられる未来 2025年12月1日

    • 私たちが気づかないうちに始まっていた、“日本不動産のバーゲンセール”という現実 2025年11月30日

    アクセスランキング

    • なぜ飲食店が休業要請で危険な状況になるかを会計の視点からお答えします。

      なぜ飲食店が休業要請で危険な状況になるかを会計の視点からお答えします。 2020年7月6日

    • 今さら聞けない日本のバブル経済とバブル崩壊 2020年11月12日

    • メールやLINEの「返信」が遅い人は仕事ができない説

      メールやLINEの「返信」が遅い人は仕事ができない説 2020年7月9日

    • やはり、優秀な経営者がいる会社には投資するべきなのでしょう。

      やはり、優秀な経営者がいる会社には投資するべきなのでしょう。 2020年7月20日

    • 自己紹介です! 2020年11月5日