ビジネスと不動産経済を本気で考えるブログ

私たちが気づかないうちに始まっていた、“日本不動産のバーゲンセール”という現実

円安で加速する「日本不動産のバーゲンセール」

ここ数年、日本の大企業に対して「アクティビスト(物言う株主)」の存在感が急速に高まっています。
アクティビストが企業に求めるのは、主に 非効率な資産の見直し・事業売却・経営改善

特に今、矢面に立たされているのが 不動産資産
本業とは関係のない巨大不動産を保有し続ける企業に対し、アクティビストは次々と「スピンオフ(切り離し)」「外部売却」を要求しています。

そしてこの流れが——
円安と外資マネーによって “日本の不動産のバーゲンセール” を引き起こしています。


サッポロ、フジテレビ、東京ガス…狙われるのは“都心の宝石”

代表例がサッポロホールディングス。

アクティビストの3Dインベストメント・パートナーズは、

  • 本業ではなく不動産収益に依存している

  • 優良資産を本業に還元すべき
    という理由から、子会社「サッポロ不動産開発」のスピンオフを提案。

恵比寿ガーデンプレイスやGINZA PLACEといった都心一等地の不動産を分離・上場し、得た資金を本業に回すべきという主張です。

さらに、

  • フジメディアホールディングス(不動産価値 約5100億円)

  • 東京ガス(含み益 約4000億円)

など、メディア・インフラ系の大企業にも同様の圧力が及んでいます。


なぜ、これほど不動産が狙われるのか

アクティビストの理屈はシンプルです。

本業以外の不動産保有は“資本効率が悪い”

多くの大企業は、バブル期から長期間にわたり土地を持ち続けています。
そのため賃料収入はあるものの、

もし今の土地価格で再評価すれば、実質利回りは “3%程度”

一方、株主が求める資本効率は8%前後。
つまりアクティビストから見ると、

優良不動産を塩漬けにして本業に投資しないのは“怠慢”
今すぐ売却し、株主還元せよ

という話になります。


「安定収益が本業を支える」論の限界

一方で企業側はこう反論します。

不動産収入があるから安心して本業に取り組める

例えばメディア企業などは、不動産収入に支えられて経営を維持していると言われます。

しかし本業が低迷するなかで不動産収益に依存している構造は、株主にとって 努力しなくても給与を得られるぬるま湯 に見えるのは否定できません。


都心不動産の大放出 → 外資ファンドへの“黄金のチャンス”

サッポロ不動産開発の入札に参加しているのは、

  • ベインキャピタル × 東急不動産

  • KKR × 野村不動産

  • ローンスター

  • 三菱地所
    …など国内外の大手が連携

ここにも明確な構図があると考えます。

外資ファンドが大量の資金を提供
国内デベロッパーが再開発ノウハウを提供
→ 日本の優良不動産を買い取る

まさに“役割分担で日本不動産を取りに来ている” 状況。


円安は外資にとって「最強の追い風」

背景にある最大の要因が 異常な円安

  • 2010年代前半のアベノミクス開始以降の金融緩和

  • 円の実質価値の長期下落

これによって、外資から見た日本の不動産は
割安どころか完全に“投げ売り状態” に見えています。

国内ではマンション投資ばかり話題になりますが、実際には

大企業の保有不動産の放出に外資が群がっている
規模としては区分マンションの取引とは比較にならない

というほうが “本当のバーゲンセール”。


まとめ:不動産リストラは止められない。だが結末は二極化する

アクティビストの主張は確かに合理的です。

資本効率を改善し、本業に集中することは本来企業のあるべき姿。

一方で、優良不動産が次々と売却されれば

  • 日本企業はバランスシートが軽くなるが、収益基盤は弱くなる

  • 都心不動産のオーナーは徐々に外資へシフト

  • 開発/再開発の主役も日本から外資主導へ転換

という未来が見えてきます。

円安を背景に進む「日本不動産のバーゲンセール」
この潮流は今後さらに加速する可能性が高い

不動産投資家・経営者・事業者にとっては国内需要だけを見ていては時代を読み違える 時代に突入しています。

著者プロフィール

Lidix

ライディックス株式会社 代表 山上 晶則

東京都で不動産会社を経営しています。
将来的に不動産経済がどうなるかは、あくまでも二次的な要因が大きいため、「国内外の政治経済や金融」、「異業種で成功している事例」などを分析することを得意としています。

このブログでは、現在の経済状況を自分なりに読み解き、時代に合った経営や様々な投資、そして、「何かに依存しない生き方」を求めて日々勉強している内容をアウトプットするために書いています。



SNSで最新情報を配信しています

関連記事

  • 今さら聞けない不動産投資の基本のキホン③~10の質問編~
    2020年11月26日

  • CA練馬春日町の事例

    CA練馬春日町の事例
    2018年6月11日

  • 【人生設計の再構築】老後格差が拡大する日本で「自分の人生にオーナーシップを持つ」ために
    2025年10月24日

  • グーグルが訴えられている本当の理由を解説します!
    2020年11月7日

  • Lidix Online

    ライディックス株式会社のオウンドメディアです。ライディックス株式会社は、東京都練馬区より投資用アパート、戸建住宅を提供している会社です。

    Lidix Onlineは主にライディックス株式会社の代表 山上が考えるビジネス・マーケティングの視点から不動産を取り巻く環境について、情報発信を行っています。

    私達の事業分野である不動産は、あくまで社会経済の一部です。より堅実な投資とは何かを考察するため、日々マクロな視点とミクロな視点で社会情勢を追いかけています。


  • 新着記事

    • 「アドバイスを求めて失敗する人」と「成功する人」の決定的な違い——最近の実体験から気づいたこと 2025年12月7日

    • 経営ビザ厳格化は不動産市場を揺らすのか——中国系ペーパー会社乱立の裏側と“移民ビジネス”の実態 2025年12月6日

    • 東京マンションはもう“安全資産”ではない──空室率70%が示す崩れ始めた神話 2025年12月3日

    • もう節税のために不動産は買えない──相続直前の駆け込み購入が封じられる未来 2025年12月1日

    • 私たちが気づかないうちに始まっていた、“日本不動産のバーゲンセール”という現実 2025年11月30日

    アクセスランキング

    • なぜ飲食店が休業要請で危険な状況になるかを会計の視点からお答えします。

      なぜ飲食店が休業要請で危険な状況になるかを会計の視点からお答えします。 2020年7月6日

    • 今さら聞けない日本のバブル経済とバブル崩壊 2020年11月12日

    • メールやLINEの「返信」が遅い人は仕事ができない説

      メールやLINEの「返信」が遅い人は仕事ができない説 2020年7月9日

    • やはり、優秀な経営者がいる会社には投資するべきなのでしょう。

      やはり、優秀な経営者がいる会社には投資するべきなのでしょう。 2020年7月20日

    • 自己紹介です! 2020年11月5日