【NewsPicks特集解説】中国マネーが大阪を席巻──“民泊×永住ビザ”ビジネスの真実
今回ブログで取り上げるのは、NewsPicksで話題になった特集記事
「日本の不動産を買い漁る、中国『移民ビジネス』が罠だった」(池田光史・小林伸代両氏)です。
この記事は、大阪・西成エリアを中心に広がる中国資本の民泊投資と、そこに絡む“永住ビザビジネス”の裏側を徹底取材したものでした。
実際に私自身も土地再生や宿泊施設の企画を行う中で、同様の動きを感じていたので、非常に示唆的な内容でした。
◆ 現地で見えた「民泊タウン化」──西成の街が変わった
取材班が訪れたのは大阪・西成区です。かつては日雇い労働者の街として知られた地域が、今や黒壁のモダンな民泊施設が立ち並ぶ“新興住宅街”のような風景へ変貌しています。
「平日でも1泊3万円、1棟貸しでグループなら格安」
「オーナーはほぼ中国人。日本語が通じない運営者も多い」
記事ではこう報じられています。

NewsPicksより転載
実際、表札には中国人名、問い合わせ先も中国語対応という物件が増え、街全体が“外国資本に占拠された”ような印象を受けるほどだそうです。
◆ 中国資本が集まる理由──“特区民泊”という制度の存在
背景にあるのが、「特区民泊」という制度。
これは2015年の国家戦略特区法に基づく仕組みで、大阪市内では365日営業が可能な“合法民泊”として注目されました。
大阪で空き家再生と民泊販売を行う不動産会社によると、「購入者の9割が中国人投資家」とのこと。
利回り8〜10%と高く、しかも現金一括購入が主流。
タワマン投資よりもはるかに収益性が高いという構図です。
ただし、これには“心理的ギャップ”もあります。
日本人にとって西成はやや敬遠されがちな地域ですが、外国人にはむしろ“立地の良い宿泊エリア”として映る。
つまり、日本人が見向きもしなかった土地を、外国マネーが再評価しているわけです。
◆ 表の顔と裏の顔──「経営・管理ビザ」を巡る“移民ビジネス”
しかしNewsPicksが特集したのは、単なる投資の話ではありません。
真の狙いは「日本の永住権取得」だったという点です。
仕組みはこうです。
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経営・管理ビザを取得するため、500万円の資本金で会社を設立
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民泊物件を購入し、運営を外部委託して「経営実績」を作る
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家族を帯同して日本に滞在し、10年で永住権を申請可能
このプロセスを、中国のSNS「小紅書(RED)」やウェビナーで宣伝する業者が急増しています。
「たった500万円で日本移住」という甘いフレーズが拡散し、中国の中間層に人気を集めているのです。
しかし、実際はそう甘くないようです。
ビザ更新では実質的な経営実態を求められ、形式だけの民泊運営では通用しない。
「永住ビザビジネス」に手を出して損をした中国人も多いと、記事では警鐘を鳴らしています。
◆ “宴の終わり”──制度変更と潮の引き際
10月、大阪府は特区民泊の新規受付を2026年5月で停止する方針を発表しました。
さらに今月、法務省が経営・管理ビザの要件を厳格化。教育目的などの“制度悪用”を防ぐための措置です。

NewsPicksより転載
つまり、「儲かる・移住できる」二重の魅力が薄れたわけです。
こうなると中国マネーは別の国・別の仕組みに動くだろう、と専門家は指摘しています。
◆ 日本の不動産市場が学ぶべき教訓
この記事を読んで強く感じたのは、「制度と資本のスキマに生まれたバブルは、必ず終わる」ということです。
特区民泊は、確かに空き家問題の解決には貢献しました。しかし、制度設計がゆるければ“永住権ビジネス”に転用される。
厳しすぎれば外国投資が引き上げ、地方経済は冷え込む。
この“微妙なバランス”をどう取るか。
それが今後の日本の課題だと思います。
◆ 結論:「騒ぎすぎ」にも「放置」にも注意を
NewsPicksの締めくくりはこうでした。
「日本は中国人にやられている」と騒ぎすぎるのも違う。
だが、制度を甘くして“悪用”を見逃すのもまた危うい。
私もまったく同感です。
日本の不動産市場は、資本を受け入れながらも、「誰のための投資か」を見極めるルールづくりが必要な段階に入っています。




