不動産投資を行っている方は日々、物件の空室対策や入居者トラブル、家賃の滞納リスクなど、さまざまな課題に頭を悩ませているのではないでしょうか。
そんな中、2025年10月に「住宅セーフティネット法」が改正されることになり、これが私たちの不動産投資の未来に大きな影響を与えそうです。
今回の法改正は、空き家問題の解消と、住まいに困っている方々(要配慮者)の住宅確保を同時に進める、まさに一石二鳥の画期的な制度です。
この記事では、法改正のポイントと、不動産投資家・大家さんにとってのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
なぜ法改正が必要なの?
まず、なぜこの法律が改正されることになったのか、その背景を簡単に見てみましょう。
日本は高齢化が急速に進み、単身の高齢者やひとり親世帯、低所得者など、住宅の確保が難しい「要配慮者」と呼ばれる方々がどんどん増えています。2030年には、単身の高齢者世帯だけで約900万世帯に達すると予測されています。
これまでは、家賃の滞納や孤独死、残置物の処理といったリスクから、大家側はこうした要配慮者の受け入れに消極的でした。今回の法改正は、こうした大家さんの不安を解消し、安心して物件を提供できるような仕組みを作ることを目的としています。
2025年10月改正、3つの主要な柱
今回の改正は、大家さんと入居者がお互い安心して暮らせる環境を整えることに主眼が置かれています。主なポイントは以下の3つです。
1. 家賃保証制度の強化
これまでは大家さんにとって最大の懸念だった「家賃の滞納リスク」が大幅に軽減されます。国が要配慮者の受け入れを原則とする家賃保証業者を認定し、その保証料の最大9割を住宅金融支援機構(JHF)がカバーする仕組みが導入されます。
さらに、入居者が亡くなった際には、届出だけで賃貸借契約を終了できるようになり、相続人とのトラブルや残置物の長期保管といった負担を避けられます。
2. 「居住サポート住宅」の新設
行政や居住支援法人と連携し、要配慮者向けに提供される住宅を「居住サポート住宅」として制度化します。大家さんにとっては、国や支援法人との連携によって入居率が安定し、社会貢献につながる物件としてブランドイメージも向上します。
3. 地域での支援体制の強化
自治体ごとに「居住支援協議会」の設置が促されます。これにより、行政、不動産業者、福祉関係者が連携し、入居から退去までの一連をサポートする体制が作られます。大家さんが単独でリスクを負う必要がなくなり、福祉サービスとの連携によって入居者の長期的な安定も期待できます。
投資家・大家さんへの影響:メリットとデメリット
この改正は、投資家や大家さんにとって大きなチャンスをもたらしますが、同時に注意すべき点もあります。
👍 メリット(利点)
- 空室リスクの軽減: 要配慮者向けの物件は、入居希望者が多いため、これまで入居者がつきにくかった地方の物件や築古物件でも、安定した入居率が見込めます。
- 家賃滞納リスクの軽減: 国が認定する保証制度を利用すれば、滞納が発生しても最大9割が保証されるため、収益が安定します。
- 孤独死・残置物リスクの軽減: 居住支援法人などが、残置物の撤去や手続きを代行してくれる仕組みが整うため、大家さんの金銭的・精神的負担が大幅に減ります。
- 補助金・税優遇: バリアフリー改修などを行った場合、工事費の補助金や固定資産税の減免を受けられることがあります。
- 社会的信用の向上: 認定された物件は社会的信用が高まり、入居希望者からの安心感が増します。
👎 デメリット(注意点)
- 手続きの手間: 自治体や支援法人との手続き、報告書の作成、安否確認など、管理業務が増える可能性があります。
- 地域差: 制度の運用や補助金額は、自治体によって異なります。物件を所有する地域の制度を事前にしっかり確認することが重要です。
- 長期的な制約: 補助金を受け取ると、一定期間は要配慮者向けの賃貸に限定される可能性があり、柔軟な戦略が取れなくなる場合があります。
- 収益性の変動: 要配慮者向けの家賃は、一般的に相場より低めに設定される傾向があります。高利回りではなく、安定的な収益確保に軸足を置く必要があります。
- 契約・保険の見直し: 入居者の属性に応じて、火災保険などの契約条件が変わる可能性があるため、事前の確認が必要です。
まとめ:この法改正をどう活用する?
今回の住宅セーフティネット法の改正は、短期間での高利回り追求よりも、長期的に安定した収益を確保する投資戦略にマッチしています。
特に、空室に悩まされていた物件や、これから物件を購入しようと考えている投資家の方にとって、新たな活路を開くチャンスとなりそうです。
改正の内容をしっかり理解し、ご自身の物件や投資戦略にどう組み込むかを検討するのもいいかもしれません。